特集

即断即決、「機を見るに敏」な台湾板金業界

2014年の台湾経済は堅調に推移

台湾の板金業界は日系企業からの仕事を開拓

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中国依存からの脱却目指す

今年3月、台湾と中国の間で2013年に調印した「サービス貿易協定」の承認をめぐって、協定に反対する学生や一般市民らが台湾の立法院(日本の国会にあたる)に侵入して議場を占拠した。立法院の周辺では、学生や市民の座り込みが続き、多くの市民が占拠する学生たちに食べ物や飲み水を差し入れ、占拠を支持した。4月に入って立法院院長が、学生らの要求を一部受け入れ、「両岸協議監督条例」(サービス貿易協定の内容と、検討プロセスを国民が監視する仕組み)が法制化されるまで同協定の審議を行わないと表明、学生たちもこれに応じて立法院を清掃し、元通りにして退去した。このようにして、市民による国会占拠という異常事態は24日目にして終結した。

国民党出身の馬英九総統は、2008年の政権発足直後から中国と対話を重ね、中国側が提案していた「三通」(直接の通商・通航・通郵)を実現化する方向に動いた。さらに中台の経済連携の強化を目指し、2010年に締結・発効した中台間の包括的な自由貿易協定「両岸経済協力枠組協議」(ECFA)に基づき、貿易品目別に段階的に障壁をなくしていこうとしていた。

「サービス貿易協定」は、ECFAの具体化のひとつで、市場開放を進めて相互参入を容易にすることが狙い。しかし、その内容については「不平等な協定」「台湾の弱小産業の切り捨てにつながる」などとして野党や学生が反発。それを押し切って与党の国民党が同協定の承認を強行採決したことから、今回の騒動に発展した。

もともと台湾には、国民党に代表される「外省人」(戦後、大陸から台湾に渡ってきた人)と、「本省人」(日本統治時代から台湾に住んでいた人)がおり、圧倒的多数を占める本省人の中には、台湾独立を考える人々が多い。それだけに、商業・通信・建築・環境・旅行・金融などのサービス分野まで中国に支配されたくない、と考える本省人の意見を代弁するかたちで、学生たちが直接行動に及んだとみられている。

画像:台湾の実質GDP成長率の推移/IMF(2014は台湾・行政院の予測値)台湾の実質GDP成長率の推移/IMF(2014は台湾・行政院の予測値)

日本人に比べ国際感覚は遥かに高い

台湾の人々と話していて感じるのは、いつ中国に呑み込まれるかもしれない、という緊張感を漂わせていることだ。だからこそ台湾人の多くが、台湾がどう転んでも生き延びられるように備えをしている。備えのひとつとしては、子どもたちが英語・中国語・日本語などを習得するのが一般的で、台湾人の外国語でのコミュニケーション能力、国際感覚は、平和な日本人と比べると遥かに高い。

それだけに、台湾板金業界の経営者の多くは自己責任で即断即決、「機を見るに敏」な経営者が多い。大半が1990年代以降に創業し、企業の歴史も20年前後が多く、創業者(董事長または総経理)も50歳前後と若いのが特徴だ。しかも、兄弟や一家の総力で起業した例も多く、ファミリービジネスが徹底している。それだけに事業継承者である子どもの養育にも熱心だ。また、国内市場が小さいだけに直接・間接を問わず外需に敏感で、直接取引は少ないものの、商社などを通して彼らの最終製品は米国・欧州・日本などへと輸出されるケースが多い。

また、台湾の人口は約2,300万人と日本の1/5で、内需依存では立ちゆかない宿命を持っている。だからこそ中国との経済連携をはじめとして、海外からのヒト・モノ・カネを台湾に還流させて、そこで生まれた製品を海外へ販売する自由経済区を策定、仕事を集めるビジネスモデルを推進している。

つづきは本誌2014年9月号でご購読下さい。

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