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日本市場への参入機会を狙う台湾板金業界

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この6月に3度目となる台湾の業界を回って、改めて「台湾、恐るべし!」という印象を持った。今回は台北近郊と台中の板金企業5社を回ったが、どの企業も今年になって受注がさらに上向いていた。3社がブランク・曲げ工程で2~3シフト、自動化による無人運転を行っており、2社では工場増設と、新工場建設計画が進んでいた。さらに5社すべてが、設計上流に3次元CADを導入、設計提案による営業活動を行っていた。

1980~90年代に起業した創業者が多く、社歴としては20年前後の企業が多かった。さらに経営者の年齢も40~50代であり、アグレッシブさが目立っている。

設備では、ブランク工程には工程統合マシンのEML-TKやLC-C1NTが4社に導入され、レーザマシン、パンチングマシンはすべての工場に設備されていた。ファイバーレーザマシンFLC-AJの台湾2号機を導入した企業もあった。また、大半の企業がERPシステムを導入しており、バーコードによる進捗・実績管理を行っている。工場内は5Sがほどほどに行き届き、外見・中身ともに、日本の先進的な板金工場と比べ遜色がないように思えた。

今回驚いたのは、3次元CADを活用した設計提案力の奥が深いこと。工作機械を中心に各種カバーを製作する企業では、設計部門に12名のエンジニアを擁しており、このうちの3名は工業デザインを専門に学んだデザイナーで、CGを使って様々なカバーを設計している。しかも絵が描けるというレベルではなく、自社の加工技術・設備がなければ加工できない特徴のある加工形状や意匠を含んでおり、様々な工夫が凝らされている。工場内にはこうして製作された各種カバーのモデルを展示するコーナーが設けられており、カラーリングにも配慮した様々な構造のカバーが展示されている。

また、従業員数が20名という工場では、創業社長自らが10年前にSolidWorksを勉強し、現在ではSheetWorksも導入して、3次元からのVPSS(バーチャル試作システム)を実践している。製品は医療機器や美容整形機、さらには立体駐車場の入出庫端末、自動改札機や飛行場の自動チェックインカウンターのような自動サービス機まで様々。来年末の竣工予定で、総工費10億円を投資する新工場建設計画を進めようとしていた。また、ステンレスやアルミ部材の加工が多いことから、ファイバーレーザ溶接機の導入も計画中で、台湾の第1号機ユーザーになる可能性も高い。

また、唯一2代目ながら、先代はプレス加工業だったのを板金加工業に業種転換、今では2階建て工場に3階・4階を増設中の工場もあった。同社は、台北市内で都市部の移動手段としてブームとなっているレンタルサイクルサービス「YouBike」に使われる自動サービス機を設計・製作している。台北メトロ(MRT)などで使用されるIC乗車券「イージーカード」か、ICチップ搭載のクレジットカードをかざすだけで自転車をシェアできる利便性があり、すでに年間2,000万人以上の利用が見込まれている。同社では台北に引き続き、台北以外の都市向けの端末も受注している。ここでも3次元CADによる設計提案によって受注に結び付けている。

このほか、各種ドアを設計製作する企業でも3次元CADを活用したドア設計を行っており、これらのツールを手足のように活用しているのが印象的だった。

各社とも日本市場への参入を目指しており、すでに2社は日系大手メーカーがアジア市場で販売する製品の板金部材一式を受注していた。

台湾人経営者のこのポジティブな姿勢を日本の経営者も見習わなければ、日本国内の仕事が台湾で製作される日が遠からずやってくるという危機感を覚えた。

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