視点

前門の虎、後門の狼 ― 板金サプライヤーの見極め

LINEで送る
Pocket

消費増税の影響で4~6月期の個人消費や企業の設備投資に若干の落ち込みは見られたものの、個人消費は6月初旬からの猛暑による特需で盛り返した。企業の設備投資も、政府の成長戦略の一環で施行された各種補助金や助成金に申請して採択された案件が6月後半から顕在化してくることから、「7月以降は反転して契約・売上とも上昇に転じる」と予測していた生産財企業が多い。日本工作機械工業会や、日本鍛圧機械工業会の受注統計を見ても、4月と5月の受注は前年同期を大きく上回っており、プレスの受注に停滞感がみられる鍛圧機械を除く、板金機械と工作機械の受注は6月も好調に推移しており、7月以降の見通しも明るい。この勢いで受注が伸びると、2014年の受注見通しを上方修正する可能性すら出てきている。

日本経済は、年央から年末にかけて緩やかに回復基調で推移するとみられていたが、足並が加速する可能性も出てきている。特に好調なのが2020年の東京五輪、復興需要、国土強靭化に対応した耐震工事が期待される建設・土木関連。また、原発再稼働の遅れ、2016年の電力完全自由化に対応して、再生可能エネルギーへのシフトを否が応でも進めなければならず、電力需要に対応する太陽光発電に必要なパネル設置用架台、パワーコンディショナーを含む受配電設備の業界も期待される。

スマートフォンの普及が加速することでデータ通信量が膨れ上がっているため、繋がりやすさと高速データ通信に対応する移動体通信基地局も増強されている。さらには世界人口が70億人を突破する中で、食糧増産に対応する農業機械や、食の安全・安心に対応した厨房機器・食品機械への需要も拡大している。特に日本食が世界に普及する中で、日本食の調理を可能とする厨房・キッチンを世界に展開する必要性が出ていることから、厨房機器・食品機械の輸出拡大を期待する予測も出ている。

日本再生の成長戦略の根幹を成す医療機器なども市場を拡大してきている。

こうしてみていくと、板金需要も年央から年末にかけて拡大基調が見込まれ、明るい見通しが出てきている。しかし、すべての企業であまねく仕事が増えるわけではない。すでに報道されているように、大手企業は今以上にサプライヤーの選択・統廃合による再編を強化しており、戦略的なパートナーサプライヤーに認定されないと、仕事が回ってこない状況が顕著になっている。しかも、最近お会いする大手企業の調達部門の方々は、地産地消より適地適産を重視するようになっている。その結果、製品を構成するコンポーネント単位でグローバルにQ,C,Dを満足させる最適調達先を探すとともに、試作・量産を切り分けたサプライヤー再編を進めようと考えている。

それだけに内需だけで判断するのではなく、グローバルスタンダードに対応できるサプライヤーが強く望まれているということを考えておかなければならない。むろん、建設・土木など重厚長大に分類される産業の仕事、そして厨房機器・食品機械など日本食を調理する設備のようなガラパゴス商品のコンポーネントは日本で調達される。それだけに、これからは重厚長大型か、日本発のガラパゴス型か、医療機器のようなグローバルスタンダード型か、製品特性を考えたサプライヤーのレイヤー分けが求められている。

前門の虎、後門の狼―ひとつの災いを逃れても別の災いに遭うと例えられるような環境で、大胆かつ慎重な決断が経営者に求められている。

LINEで送る
Pocket

タグ

  • タグはまだ登録されていません。

関連記事

  • 関連記事はありません。

視点記事一覧はこちらから