板金論壇

日本のモノづくりを支える日本文化、欧州に学ばなければいけない”ゆとり”

『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫

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欧州の専門メディアが見た日本

EU各国から日本の板金業界の現状を取材するために来日した欧州の業界専門メディアの記者に同行して、板金加工が主力の生産技術となっている企業2社を訪問した。1社は日本を代表するATM・発券機メーカーのメカトロ工場。もう1社は移動体通信や太陽光発電用のパワーコンディショナーや、EV車の充電装置向けの筐体などを生産する中堅企業。いずれの企業も板金工場はフル操業、24時間稼働を行っていた。

1社目の企業はブランク工程に8台のパンチ・レーザ複合マシンを、曲げ工程には7台のベンディングロボットを導入していた。これらの自動機は1日24時間・年間320日稼働しており、1年8,760時間に対する稼働率はほぼ90%と、驚異的な数字を挙げている。

また、自動化されていない汎用のベンディングマシンが25台ある。これらのベンディングマシンの上部テーブルには現場端末がマウントされ、作業者に対して曲げ加工手順をナビゲーションするシステムを構築している。曲げ線、バックゲージへの突き当て位置、曲げ角度などが端末上に展開図とともに示され、作業者はナビゲーションどおりの手順で曲げ作業を行う。作業が終了すると、今度は端末に、加工した製品の検査を行うための測定項目、測定箇所、目標数値などが表示され、作業者は指示された箇所を指示された測定器で測定、その数値を画面上に入力する。すると目標値との比較が自動で行われ、OKであれば次の曲げ作業指示が出てくる。それと同時に、その作業完了情報が上位の生産管理システムに自動的にアップロードされ、作業の着手・完了情報が自動的に記録される仕組みになっている。

このベンディング・ナビゲーションシステムを使うと、初心者も曲げ作業が簡単・正確に行うことができるようになっている。また、生産の進捗・実績情報から加工機の稼働実績までがビジュアライズド(見える化)されており、工場事務所からでも設備の稼働状況や生産状況をリアルタイムに確認できるようになっている。

現在、欧米では必要な時に、必要な製品を、必要な数だけつくり、ムダな在庫を持たないJIT生産方式に象徴されるリーン生産方式(トヨタ生産方式)の導入がブームとなっており、定着してきている。しかし、生産のビジュアライズドに関しては、まだ不十分。現場の作業者がお互いの進捗・実績情報、品質情報を共有するという考えは定着していない。

それだけに、扱うアイテム数が20万点を超え、デイリーに500機種のコンポーネントを平均ロット50個でデリバリーするメカトロ工場の生産現場に、欧州の記者は驚愕していた。特に、プレス加工並みの精度を板金加工で実現するための様々な取り組みの大半が自前技術で構築されていること、しかもこうした生産システムが限られた工場スペースで運用されていることに感激していた。

つづきは本誌2014年8月号でご購読下さい。

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