Interview

レーザ事業進出から25年、日本のレーザ溶接技術のパイオニア

「受注型ジョブショップ」から「研究開発型ジョブショップ」、「市場開発型ジョブショップ」へとビジネスモデルを転換

前田工業 株式会社 代表取締役社長 前田 利光 さん

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画像:左:同社が開発したアダプティブ・フィラーワイヤーコントロール機能を使用したワーク(中)と未使用のワーク(奥)。同機能を使うことでワイヤー送給量を制御して適切な溶接を行う(Photonixより)/右:インサート材を用いたレーザ溶着によりアルミやステンレスといった金属材料とCFRPの異種材接合を行ったサンプル(Photonixより)左:同社が開発したアダプティブ・フィラーワイヤーコントロール機能を使用したワーク(中)と未使用のワーク(奥)。同機能を使うことでワイヤー送給量を制御して適切な溶接を行う(Photonixより)/右:インサート材を用いたレーザ溶着によりアルミやステンレスといった金属材料とCFRPの異種材接合を行ったサンプル(Photonixより)

愛知県東海市にある前田工業㈱は、創業以来、鉄鋼関連産業向けに自動化周辺装置・機器を製造してきたが、1989年(平成元年)からレーザ事業に進出。日本のレーザ溶接技術の黎明期から25年にわたって研究開発投資を続けてきたパイオニア企業のひとつで、「受注型ジョブショップ」から「研究開発型ジョブショップ」、「市場開発型ジョブショップ」へとビジネスモデルを転換しながらレーザ事業を確立していった。CO2・YAG・半導体・DDL・ファイバーといった各種レーザ加工機を設備し、とりわけレーザ溶接の技術開発には定評がある。自社製のレーザ加工ヘッドやレーザ溶接システムも開発し、各種公共展で発表。現在は顧客からの強い要望があり、同社のノウハウを織り込んだ溶接システムを本格的に展開していこうとしている。2014年4月「レーザー学会産業賞 貢献賞」受賞。

―創業からレーザ事業へ進出するまでの変遷を教えてください。

前田利光社長(以下、姓のみ) 当社は1950年に私の祖父が創業して、父が2代目、私が3代目になります。会社設立当初から、大手自動車メーカーグループの大手鉄鋼メーカーの1次サプライヤーとして、無人搬送装置などの自動化周辺装置・機器を製造してきました。しかし1985年のプラザ合意により円高が急激に進んだことで原価低減が強く求められるようになり、ムダ取り・歩留り向上・工程圧縮を推し進め、協力会社へ委託する仕事を減らしていく流れが鮮明になってきました。お客さまからも「1社依存では経営的に将来不安定になる。今のうちに多角化経営を始めた方がいい」とご指導いただき、1985~86年に先代である私の父が「レーザ」「電子ビーム」「セラミック」の3分野で技術調査を実施。「これからはレーザが伸びる」と判断して、1989年に出力1kWのCO2レーザ切断機を導入したのが当社のレーザ事業の始まりです。2年後の1991年には、3kWのCO2レーザ溶接・切断兼用機を導入しました。

画像:前田利光社長前田利光社長

―CO2レーザの切断機を導入したのはなぜでしょうか。

前田 当社のターゲットは最初からレーザ溶接でした。それまでも、アーク溶接やスポット溶接では効率が悪く、特に溶接歪みには苦しめられていたので、将来はレーザによる高精度な溶接が必ず定着すると予測しました。当時はレーザ溶接というと、ガスレーザであるCO2レーザよりも、固体レーザであるYAGレーザのパルス発振が中心でしたが、ランプ励起のYAGレーザでは出力が小さく、板厚1.0㎜以下の微細加工領域でしか使えません。また、連続発振(CW)への適用が難しく、パルスレーザ溶接しかできませんでした。ランプ寿命も短く、数百時間で交換する必要があり、ランニングコストも課題でした。当社の場合、鉄鋼業界向け自動化周辺装置・機器関連の仕事では鋼板やステンレスの板厚6~19㎜といった中厚板を切断することが多く、大出力のCO2レーザ切断機で対応せざるを得なかったという事情もあります。当時はレーザ溶接自体が特殊な工法という位置づけで、製鉄所でのダル加工や、一部の大手自動車メーカーを除いて実用化の例はありませんでした。そのため当社のCO2レーザ加工機も、平日は切断機として活用しながら、休日にはミラーやガス、プロファイルなどの仕様を変えて溶接機に仕立て、レーザ溶接のノウハウを蓄積していきました。1991年に3kWのCO2レーザ切断機を導入したときは、Z n S e(ジンクセレン) の加工レンズだとスパッタの影響でレンズがすぐに劣化してしまうので、金属製の放物面ミラーを使った加工ヘッドを購入し、本格的にレーザ溶接に取り組み始めました。1995年には初めて溶接・表面改質に特化したCO2レーザ加工機(5.5kW)を導入しました。

画像:2012年11月に開発した30kWファイバーレーザ溶接機2012年11月に開発した30kWファイバーレーザ溶接機

つづきは本誌2014年7月号でご購読下さい。

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