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栄冠は再び手中に輝く

「後に続け」の意気込みで技術の研鑽と広がるヒトの和

株式会社 田名部製作所

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画像:第26回優秀板金製品技能フェアで「経済産業大臣賞」を受賞した(株)田名部製作所の 「フィルター」(SUS304、板厚1.5・3.0mm、W460×D170×H460mm)第26回優秀板金製品技能フェアで「経済産業大臣賞」を受賞した(株)田名部製作所の「フィルター」(SUS304、板厚1.5・3.0mm、W460×D170×H460mm)

「ヒトづくり」が日常の中で進められていた

約束の時間より少し早く着いたので、取材を始めるまで、会議室で待たせていただいた。室内のもう一方のテーブルには作業服姿の社員さん8名が同じ資料を順に読み合わせ、田名部淳社長が時々にコメントされていた。ホワイトボードには「QA委員会」の文字があり、しばし、その議論の内容に引き込まれた。

聞けば、昨年夏の甲子園に初出場・初優勝の快挙を成し遂げた前橋育英高校の監督と大手企業の経営者との対談が紹介された雑誌記事を教材に、技術とともに挨拶・掃除といった当たり前のことを行う「凡事徹底」という力が大事、といった内容であった。参加者が交互に記事を読み進め、意見を述べる。その中の「悪しき習慣の排除」「真剣にやろうと思ってやらないとモノにならない」といった発言趣旨を、参加者が自分たちの仕事の目線で確認し合う。対談で語られている内容はモノづくりにも相通じるのだ、と感心しながら聞いた。

画像:代表取締役の田名部淳氏代表取締役の田名部淳氏

「フィルター」が経済産業大臣賞を再び受賞

職業訓練法人アマダスクールが主催する「第26回 優秀板金製品技能フェア」の組立品の部で世戸口大輔係長が主体となって製作した「フィルター」が経済産業大臣賞を受賞した。同社が同賞を獲得するのは昨年に続き2回目の快挙。

同社は2004年頃より同フェアへの出展を社員教育の一環として位置づけ、毎年担当者を決め、チャレンジしてきた。第20回(2007年度)、第23回(2010年度)、第24回(2011年度)は厚生労働大臣賞を、そして昨年の第25回(2012年度)に続き今年も2年連続で経済産業大臣賞を射止めた。どうしてこのような偉業を達成できたのか、再び聞く。

2001年に大手企業から転職して入社した田名部社長は親の代から続く会社をさらに強い会社に、より成長する会社にしていくための”核”はネットワークによる生産性の向上とともに”ヒトづくり”が最重要と考え、内外からの教育ツールを活用した教育研修制度を確立。フェアへの出展も社員同士のコミュニケーションづくりの一助になり、技術面での横の連携などにも大いに役立つのではないかと応援してきた。

「フィルター」製作の主幹事を担当した世戸口係長は次のように語っている。

「私は18歳で入社して以来17年間、田名部製作所で勤めてきました。アマダのベンディングマシンRG、FBD(上昇式)から、HDS(下降式)までベンダー一筋でやってきました。入社当初は工場長などから指導を受け、進化するマシンに向き合ってきました。また、前後工程の応援もできるよう3次元ソリッド板金CAD SheetWorksや2次元CAD/CAM AP100の操作から、レーザマシン、パンチングマシン、さらにはTIG溶接、半自動溶接機まで一通りこなすことができるようになりました」。

「次の担当(主幹事)は君ですよ、と告げられたのは1年前の正月過ぎ。ここ数年は金賞、厚生労働大臣賞、経済産業大臣賞など最高の賞を同僚や先輩が受けているのを目の当たりにしてきました。第24回のフェアでは厚生労働大臣賞を受賞した『攪拌機』の製作に取り組んだ経験もありましたが、指名されて大変緊張しました」。

世戸口係長は体格もよく、なんでも任せて安心という雰囲気を持っている。そんな世戸口係長は、日常の生活の中で生きている製品で、なおかつ自分の技術が最大限に発揮できる製品、また、従来の常識を覆す独自の工法にチャレンジしたいと考え、いろいろな人と会話する中で、製作する製品はエアーフィルターに決めた。

「おおよその見当がついたのが5~6月で、仕事の繁忙期と重なったこともありますが、今回は出足が遅かったと少し悔やんでいます。8月にはポンチ絵を描き、SheetWorksやAP100で細かく分解、同類の製品がないか、インターネットなどでも調べながら構想を詰めていきました。設計・バラシ・展開・ブランクまでの工程を管理し、調整のために、いろいろなヒトと何回も話し合いました」。

「難しかったのは、R曲げのスリットの長さ・幅、スリット曲げの距離――特にR形状のスリットの部分をどのくらいの距離にしたらきれいなR形状になるか。スリットの幅も、広いと溶接が難しく、狭すぎると干渉してきれいなRがでません。特型を使って機械で曲げることも考えましたが、今回はレーザでブランク加工する際に曲げ線にスリットを入れて、手で曲げるやり方を試しました。それによって分割や機械加工で対応していたモノが、最小限の分割で製作できました」。

画像:栄えある表彰状を手に世戸口大輔係長栄えある表彰状を手に世戸口大輔係長

つづきは本誌2014年7月号でご購読下さい。

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