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鉄道をめぐる話題、板金需要としても注目

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日本の鉄道は、その正確さと安全・安心な公共交通機関として世界に誇るものがある。3.11東日本大震災でも、津波被害によって三陸鉄道やJR気仙沼線などで大きな被害が発生したが、地震直後の乗客や乗務員などの人的被害は皆無であった。また、東北新幹線や秋田新幹線、山形新幹線などでも地震発生による人的被害は発生しなかった。あれだけの巨大地震でありながら、時速250㎞以上で高速走行していた新幹線車両が脱線・転覆することなく無事に最寄り駅で停車できたのは、日本の鉄道技術の高い水準を世界に披瀝する結果となった。

しかし、新幹線計画も来春の北陸新幹線・金沢ルートが開業すると、その後の整備新幹線計画は、向こう10~20年で、北海道新幹線の青森~札幌間、北陸新幹線の金沢~敦賀間、九州新幹線・長崎ルートの武雄温泉~長崎間の開業が待たれるのみ、これらの新線建設が終了すると、新たな新幹線計画はリニア中央新幹線を除くとなくなる。

現在、政府与党などは残された整備新幹線計画を前倒して、2025年頃までに工事を完了させ、高速鉄道網を全国に張り巡らせることを計画している。しかし、旅客鉄道会社の収支計画もあるので、建設費の負担をめぐる議論の決着がまだついていない。

一方で、2020年の東京五輪開催までに、首都圏の鉄道ネットワークの利便性をさらに改善するための見直しが進んでいる。JR・私鉄・地下鉄各社が利便性と首都直下型地震への対応なども含め、鉄道ネットワークのさらなる高度化、利便性の改善、安全性の確保を目指している。

地域鉄道は、地域住民の通勤・通学などの足として重要な役割を担うとともに、地域の経済活動の基盤となっている。しかしながら、地域鉄道を取り巻く環境は、少子高齢化やモータリゼーションの進展などにともなって厳しい状況が続いており、2012年度には、全国91社の地域鉄道会社のうち、約80%の事業者が鉄軌道業の経常収支ベースで赤字を計上するに至っている。そこで、地域鉄道を見直そうという動きも加速している。

こうした動きに対応して板金の需要先でもある鉄道車両業界では北陸新幹線の金沢延伸を前に、同路線で運用されるE7系新幹線車両が試運転を始める一方で、東海道・山陽新幹線では、現在の主力車両であるN700系の後継車両であるN700A系に続くX系の計画もある。

また、都市交通では鉄道車両もさることながら、駅のバリアフリー化、ホームからの転落事故を防ぐホーム安全柵の設置も積極的に行われるようになっている。さらに高速化と省エネに対応したステンレス車両やアルミ車両などの新造車両導入も活発になっている。

また、政府は新興国の高速鉄道・都市鉄道計画に日本の新幹線技術をはじめとした鉄道技術を輸出するため、オールジャパンで受注獲得に向けたトップ外交を強めている。地下鉄などの都市交通の整備に対しては、信号システムをはじめ、運行システムや駅務関連の自動券売機や自動改札機、IC乗車システムなど、運行全体のシステムからエンジニアリングなどを一括して、日系企業連合が受注するケースも増えている。

欧州では鉄道車両のビッグ3(シーメンス、ボンバルディア、アルストム)が積極的に海外受注の獲得に力を入れるとともに、地産地消への対応で、海外工場の展開を急速に進めている。その意味で、日本でも国を挙げて鉄道関連事業への進出計画を取りまとめる必要があり、鉄道ビジネスの将来には明るい未来が期待されるようになっている。折に触れて鉄道車両関連の特集も企画していきたい。

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