特集

強い農業、食の安全・安心を目指す農業機械(前編)

大規模農家向けに大型化が目立つ農業機械

板金比率が高いポスト・ハーベスト商品

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農家戸数は150万戸となり2000年から半減

農業機械は、狭義には稲作用・畑作用・果樹園芸用などに分類され、農作業の工程別にトラクタ、コンバイン、バインダ、田植機など各種機械がある。しかし一般的には広義の意味で、刈取機や収穫機などのハーベスターで作業した後、収穫した作物を乾燥し、稲作であれば籾すり・脱穀・精米などの工程を経て米として消費者の口に入るまでの「ポスト・ハーベスト」(収穫後)商品までを含め、農業機械と呼ばれている。

一般社団法人日本農業機械工業会(日農工)が毎月発表する「日農工統計」では、ポスト・ハーベスト商品を含む、広義の農業機械の生産・出荷統計が掲載されている。

農業機械は、高齢化が加速する日本の農業には欠かせない機械であり、農業従事者の労働負担の軽減に貢献してきた。近年は、農業政策の転換や農家の後継者難などにより、農家戸数は2000年には312万戸だったものが、2013年には150万戸と半減、この推移が続けば2045年には日本から農家がなくなってしまうとの試算もある。農業人口も2013年には562万人――このうち約半数の285万人が女性であり、しかも65歳以上の高齢者が36%の203万人と、3人に1人が65歳以上となっている。特に専業農家ではこの傾向がさらに強まっており、平均年齢は70歳に手が届くまでになっている。日本の総人口に占める高齢者の割合が25%なので、農業分野では特に高齢化が加速していることがわかる。

画像:農業機械(国産分)の出荷金額推移/(社)日本農業機械工業会 ※2013年の値には新規集計項目の「コイン精米機」33億円が含まれます。農業機械(国産分)の出荷金額推移/(社)日本農業機械工業会/※2013年の値には新規集計項目の「コイン精米機」33億円が含まれます。

2013年の出荷額は12.1%増、5,030億円

こうした中で、日本農業の機械化に貢献してきた農業機械メーカーは、日農工の正会員数で68社。ここ数年、大きな増減はない。日農工によると、2013年はトラクタとコンバインの出荷が好調で、全体の出荷額は5,030億円(グラフ)。新規集計項目分を差し引いても、前年の実績を12.1%上回った。輸出向けが3.7%増の1,580億円、国内向けは16.5%増の3,450億円だった。出荷額で前年を上回ったのは、トラクタが13.1%増の2,640億円、コンバインが24.7%増の972億円、田植機が5.7%増の423億円、防除機が6.0%増の171億円のほか、刈払機、乾燥機、籾すり機、選別機など。一方、前年を下回ったのは、耕うん機が7.7%減の188億円のほか、精米機、動力脱穀機などだった。

トラクタの出荷台数は15万3,991台で2.2%増。このうち10万台以上が輸出向けで66.4%を占めている。国内需要の大きな伸びは期待できないため、メーカーは輸出に力を入れている。その反面、国内向けに出荷された5万1,778台を仕様別に見ると、20~30馬力が2万786台でもっとも多く、次いで30~50馬力が1万3,763台。しかし、前年比で見ると、50馬力以上が39.4%増と大きく増えた。

戸別所得補償金の交付や米価高値による購買意欲の高まりにより、大規模農家が大型機械購入に動いたため、大型機を中心に好調に推移した。また、東日本大震災の復興事業の影響で東北地区の需要も伸びた。今後は集落営農化により大規模農家に農地が集約され、農業機械の大型化がさらに進むと考えられている。

つづきは本誌2014年5月号でご購読下さい。

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