〜視点〜

回復軌道に乗った中国経済
日中板金業界の協業を考える




4月6日から11日まで中国・北京で第11回中国国際工作機械見本市(CIMT2009)が開催された。中国国内はもとより日本、韓国、台湾、ドイツ、スイス、イタリアなど世界の主要な工作機械メーカーが一様に大きなスペースを取り、全体では1,100社以上の出展者が最新の工作機械、鍛圧・板金機械、工作用機器、工具類を出展した。昨年、北京首都国際空港から車で20分ほどの場所に竣工した北京国際見本市会場は10万m2の展示面積を備えた8ホールからなるコンベンションセンター。期間中、会場には国内外から15万人以上の来場者があり、中国経済への期待を内外に示すものとなった。
会場で取材に応じていただいた板金加工関連企業の関係者の話を聞くと、1月頃から引合いが増え始めたようで、仕事の内容も携帯電話関連や医療機器などの薄板から、鉄道、配電盤、金融端末などの中・厚板まで、幅広い分野で仕事が増えてきているようだ。ある企業では、世界的に鉄道車両の需要が増えてきたことから、フランスのアルストム社、ドイツのシーメンス社、カナダのボンバルディア社など世界的な鉄道車両メーカーから鉄道車両用エアコンなどの仕事が急増しているという。また、別の企業はシーメンス、GEヘルスケア、コダックといった医療機器メーカーからの仕事が増えていると語っていた。さらに、別の企業では、鉄道用の自動改札機や券売機、金融端末装置関連の仕事が増えているとの話も聞いた。その企業の関係者の話を聞くと、金融端末業界ではこれまでは紙幣を引き出す機能しかなかったキャッシュディスペンサー(CD)に代わって、中国でも最近は紙幣の出し入れが可能なATMの需要が増大しているという。そのため、偽札を選別する画像識別装置や古い紙幣でもローラー上を通って格納ができるATMの心臓部である紙送り部分の精密板金加工の引合いが出てきているという。これまでのところ、画像識別装置や紙送り部のガイド機構のメカ部品は中国製では品質上の問題が残っていて、日本製が採用される割合が高いという。しかし、中国国内のインフラが整備されてくれば、そうしたコア部品の製造も中国で行えるようになるのは確実。それだけに日本の板金業界としては中国経済の復活には期待するものの、それが直接的に日本の実需に繋がるか判断が付かないところである。
一方で、日本の板金企業が中国の回復軌道に乗った中国経済日中板金業界の協業を考える板金企業と協業する動きがここへ来て増える傾向にある。日本で中・厚板加工を得意とする日系の板金工場では薄板の板金加工を中国企業に発注することで、農機具関連の板金製品をセット受注できるようになった。さらには、建機関連の受注を拡大するため、30o以上の厚板が切断できるプラズマ切断設備を要する企業との協業を模索中で、すべての設備をワンセットで導入するのをやめて、それぞれの得意分野を持った中国系板金工場との連携で仕事の質と量を拡大しようとする傾向も見られるようになってきた。特にそうした企業で目立つのがここ数年、日本に3年間の期限付きで技術研修に来ていた中国人研修生。3年の研修期間を経て中国へ帰国した彼らが窓口になって日中の板金工場を結び付ける動きも出てきている。
いずれにしても近くて遠い国と言われてきた日本と中国が世界同時不況を機に手と手を取り合っていくことが望まれる。

※本誌は6月号より誌名を「Sheetmetalましん&そふと」と改題し、従来の企画に加え「ヒトづくり、モノづくり」のページを増やした誌面刷新を行います。今後の誌面にご期待ください。