「食の安全・安心」と海外展開が課題の食品機械業界
年間に消費する飲食費用は80兆円



表1: 食品機械の国内販売額推移表1: 食品機械の国内販売額推移
食品市場は量的飽和・成熟化
 近年、食の簡便化志向の高まりや外部化の進展を反映して、外食・加工食品が増加しており、食品産業全体としての規模は拡大・発展してきている。農林水産省がまとめた資料によると日本国民が最終消費している飲食料費は年間80兆円を超えている。食品産業(食品製造業、食品流通業および外食産業)の国内生産額は約85兆円(平成17年)で、全産業(918兆円)の約9%を占めている。また、食品産業の就業者数は約774万人で、全産業(約6,303万人)の約12.6%を占めている。
 今後の「国内人口の減少」に伴い、食品産業の市場は量的飽和・成熟化を迎えることが予想され、シェア争いがますます激しくなるものと考えられる。また、「高齢化率」は上昇を続けており、41年後の2050年には、国民の約3人に1人が65歳以上の高齢者という極端に高齢化の進んだ社会の到来が見込まれている。さらに、「単独世帯」が増加しており、特に65歳以上の高齢者の単独世帯が急激に増加している。加えて、「女性の就労意欲の向上」を背景に、女性の雇用者は、増加傾向にある。このような「食」を取り巻く情勢の変化により、簡便化志向の高まりや外部化など食料消費についても変化が生じており、食品産業に対しても大きな影響を与えている。

食品機械には多種多様な機種がある
表2 : 食の志向について表2 : 食の志向について
 こうした「食」の変化に大きく影響されるのが食品機械業界。食品機械は、農林・水産・畜産などの原料を加工し、食料・飲料・調味料などを製造する機械である。食品機械には加工する食品別に多種多様な機種があるが、基本的には多品種少量生産である。また食料品を加工するため、安全で衛生的な製品の生産が求められている。市場は成熟化しているが、需要先である食品産業は好不況に影響されにくい業種のため、食品機械製造業も不況に強い業種と言われている。しかし、少子高齢化で国内の食品需要の量的な拡大が見込めない中、海外市場の開拓を目指す食品機械メーカーの動きも加速している。
 (社)日本食品機械工業会の調査によると、2007年の国内販売額は4,572億3,400万円でほぼ前年並みとなっている(表1)。輸出額は、財務省の通関統計によると、食品機械の主要輸出先であるアジア地域への輸出が2006年の減少から復調傾向を示し、北米地域および西欧地域への輸出も好調に推移したことから、252億3,000万円(前年比14.3%増)を記録している。...

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