年頭所感
社団法人日本工作機械工業会 会長 中村健一




中村健一会長中村健一会長
 平成21年の新春を迎え、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
 昨年の工作機械業界は、100年に1度とも言われる不況を迎えた中、毎月の受注額が6月から前年割れに転じ、月を追うごとに減少幅が拡大していきました。そして、10月に入ると、市況はにわかに減速を強め、受注額は前年比4割減と大きく後退し、53カ月続いた1,000億円超えも途絶えるなど、直下型地震のような激震が業界を襲いました。特に、自動車の減産や建設機械の需要急減による内需の低迷に加え、受注総額の半分強を占める外需全体の冷え込みが大きく響きました。以上のことから、2008年の工作機械受注額は、5年連続の1兆円台は確保したものの、年初見通しの1兆5,000億円を下回るものと考えます。
 しかしながら、大不況と言われる中、昨年10月から11月にかけて開催したJIMTOF 2008は、来場者数で過去最高の記録を達成した他、人材確保・育成に関する企画や産学連携による学生対象のセミナー開催など学生向けのイベントにも注力し、お陰さまで好評を博したところであります。このJIMTOFの盛況ぶりを次の受注に結び付けられるよう、期待を込めてフォローしていきたいと考えます。

JIMTOF 2008の開会式でテープカットを行う中村会長(右)JIMTOF 2008の開会式でテープカットを行う中村会長(右)
 さて、本年の工作機械市況についても、今のところ、あらゆる業種・市場で好材料がなく、堅忍不抜の1年となります。具体的な受注額に関しては、見通しの立て難い状態ではありますが、年後半の回復を期待したいところです。
 このように現下の受注状況は低迷しており、先行きも不透明ではありますが、モノづくりの基礎を為す優秀な人材の確保と育成は、景気動向に関係なく継続して取り組んでいかなければなりません。当会でも、昨年に引き続き、有為な人材の確保と育成に取り組みます。特に、工作機械の製造を担う優秀な技能者の存在は、業界の発展に欠くことのできない重要な要素であり、その育成は、瑞々しい感性を持った10代の頃が最も適していると考えます。しかしながら、最近では技能者の卵とも言うべき18歳の優秀な工業高校の生徒が産業界に就職せず、進学してしまうケースが増加しております。そこで、本年は、工業高校や工業高等専門学校の生徒に焦点を当て、業界のイメージアップや人材確保のために必要な業界活動を強力に展開していきます。また、来るべき次の成長期に備えて、工作機械産業の成長基盤を一層強化するために、世界の新興発展地域における市場戦略や知的財産戦略を確立する他、次世代に向けた技術開発の切れ目ない前進などにも取り組みます。
 本年も関係各位には、ご指導、ご鞭撻とさらなるご協力を賜りますようお願い申し上げますとともに、平成21年が皆さまにとってさらなる飛躍の年になることを祈念致しまして、年頭のご挨拶とさせていただきます。