発展が見込まれる鉄道車両業界
今後20年間に世界で1万km前後の高速鉄道路線を建設する計画



2005年から右肩上がり
鉄道車両の生産推移統計鉄道車両の生産推移統計
 経済産業省の「工業統計調査」によると、2006年現在で「鉄道車両製造業」の事業所数は22、年間製造品出荷額は、1,705億7,300万円となっている。事業所数については2002年の29から、2003年に2事業所、2004年に1事業所、2005年に4事業所が減って22となった。事業所数が減少する一方、(社)日本鉄道車輌工業会が発表する鉄道車両の生産推移統計(グラフ)によると、2007年の生産高は2,460億円、2006年は2,186億円、2005年は1,924億円と、過去3年で右肩上がりに推移してきている。生産された車両の仕向け先はJR新幹線、JR在来線、公民鉄、輸出に分けられるが、2007年の場合、最も多いのがJR在来線の1,021億円、続いて公民鉄の620億円、JR新幹線の352億円、輸出の267億円となっており、国内需要および輸出入の規模もそれぞれ異なるが、全体的に見れば安定した増加傾向が続いている。
 鉄道車両に対する社会的なニーズとしては、原油高騰や二酸化炭素削減意識の高まり、新興国の急速な都市化が追い風となっており、省エネルギー、環境への対応という観点からも鉄道輸送に対する期待が高まっている。

安全・安心・快適・便利に対するニーズ
日立製作所が製造するイギリス向け高速鉄道車両「CLASS395」日立製作所が製造するイギリス向け高速鉄道車両「CLASS395」
 尼崎で発生した大規模な列車事故などの影響から、これからの鉄道車両には欠陥部品を出さない安全性はもちろん、年々進む鉄道の高速化に対応した技術や、低騒音・低公害・リサイクル素材の使用といった環境面、さらにはバリアフリーへの配慮も大切な要素となってきている。車両の軽量化対策からアルミ製車両が増加する傾向にあるが、安全に配慮した構造など課題は多い。さらに、IT化やユビキタス化が進む情報化社会に対応するため、JR各社や民鉄各社では車両内に液晶画面を使った情報サービスなどの配備を進めてきており、今後もIT技術の活用が広がっていくものと思われる。交通機関という機能のみならず、乗客が安心・安全・快適・便利に利用できる鉄道車両が求められている。

世界が注目する新幹線技術
 新幹線技術でトップクラスのノウハウを持つ日本の鉄道業界に対しては、世界―とりわけ中国やインドなどのBRICs諸国や新興諸国―から高い関心が集まっている。特に安全・快適で正確な運行を行う新幹線技術をトランスファーして、新興諸国の鉄道基盤を整備する動きが顕著となっており、台湾新幹線、中国新幹線などJR各社をも巻き込んだ活発なビジネスが展開されている。また、ステンレス、アルミ車両をはじめとした日本製の鉄道車両が海外の鉄道会社で採用される動きも目立っている。...

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