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後継者の覚悟が事業発展につながる

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緊急事態宣言が解除になり、社会経済活動にも以前のような活気とにぎわいが戻りつつあります。感染拡大の第2波に備え、“3密”を避けながら、どのように経済活動を再開させていくかが課題となっています。

板金業界では一部の好況業種 ― 半導体製造装置、5Gなどの情報通信機器、医療機器、食品機械、EVに関連した電池関連などを除いては、受注が大きく落ち込んでいます。

一時期は好調だった建築関連も、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、工事の遅延や一時中断、インバウンド需要の蒸発によるホテル建設工事のキャンセルなどで、4月以降は大幅な落ち込みが見られています。今年度の粗鋼生産量も1億トンを大きく割り込み、8,000万トンに届かないともいわれます。ただ、国土強靭化に関連した土木工事は、ほかの業界と比べて落ち込み幅が少なく、安定しています。

その一方で、景気の先行指標とされる建設機械の出荷額、工作機械の受注額は、月を追うごとに下落幅が大きくなっています。建設機械の5月度出荷額は内需が前年同月比▲15.7%、外需は同▲45.6%、全体としては▲35.4%となり、リーマンショック後に匹敵する落ち込みとなりました。

工作機械も5月度受注額は2009年11月(473.5億円)以来、10年6カ月ぶりに550億円を下まわりました。特に外需は、欧州や北米、その他アジア(インド・ASEANなど)でリーマンショック後(2009~2010年前半)の水準まで軒並み落ち込むなど、現状ではまったく先が読めない状況となっています。

両産業からの発注量が大きかった板金業界では、6月に入って受注が一段と落ち込み、4勤3休にして「雇用調整助成金」を申請する企業が増えています。

こうした中でも好況業種に恵まれ、圧倒的な競争力で受注を伸ばし、今期売上も前期並みかそれ以上を見込んでいる企業には、地元の金融機関、業界関係者からM&Aの相談が増えているようです。相談を受けた企業も、手狭な工場や人手不足を一気に解消する手段として、前向きに検討しています。

ある経営者は「商権を買う気はなかったが、優秀な社員がいたので数名引き取った」と話していました。また、ある経営者は「工場が手狭になってきたが、工場建設・設備増設はままならない。それなら設備・社員ごと会社をM&Aした方が投資効果は大きい」と語っていました。

「このサバイバル競争に勝ち残った会社が、淘汰された会社の仕事を受注する構図が生まれている。最後まで残れる会社でありたい」と自動化に邁進する企業も増えています。

その一方で、コロナショックをチャンスに変え、業容拡大を目指す企業もあります。

「医療機器関連の仕事をしている利点を生かし、5月22日から募集が始まった『サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金』に申請した。もし採択から漏れても粛々と計画を進めたい」と、新工場の図面を前に熱っぽく話す経営者もいました。

こうしたポジティブな話をする経営者に共通するのが、2代目・3代目で年齢は40代、事業発展に向けた強い意志を持っていること。そして、その意志を積極的に社員に語り、社員のモチベーションアップに力を注ぎ、5年先、10年先の会社をこんな姿にしたいと明確なビジョンを掲げていることです。

大半は専務・常務時代からの顔見知りなので、事業発展の秘訣をお聞きすると「幸運だったこともあるが、早くから自分が後継者だと腹をくくり、覚悟を決めたことが大きかった」と話していました。

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