特集 コスト・衛生への対応が求められる厨房機器・食品機械

厨房機器・食品機械の市場総額は1兆円超え
中小企業が多く、過当競争が激化
衛生工学視点で“食”の安全確保が求められる



変化する“食”へのニーズ
●グラフ 外食産業市場規模の推移/(財)食の安全・安心財団●グラフ 外食産業市場規模の推移/(財)食の安全・安心財団
人間が生きていくうえで欠かすことのできない“食”に関連する産業は、生きるための必需品だけに景気に大きく左右されることはなく、世界的な人口増加によって着実に市場は拡大し、産業としても巨大なものになっている。
その一方で新興国では“飢餓からの脱出”が大きな課題となっている。地球上では貧困や天候異変、自然災害や戦争などによって飢餓状態が慢性的に発生しており、乳児を含む子どもなどの弱者を中心に多くの飢餓難民が生まれ、栄養失調で死にいたる人々も後を絶たない。その反面、先進国や、新興国でも富裕層といわれる人々は飽食によって肥満や糖尿病などの贅沢病にかかる人々が年々増加している。
飽食が進み“食”がビジネスとして発展する中で、消費者の“食”への関心は、「お腹いっぱい食べたい」というプリミティブな欲求から、時代とともに「美味しいものを食べたい」という欲望へと変わり、さらに最近では健康志向から「体にいいものを食べたい」というように繊細な要求へと変わってきている。
“食”の安全・安心に対するニーズが高まりを見せる中で、外食・中食産業で食材を加熱したり冷やしたりして料理をつくるための厨房機器や、食品加工工場などで食材を加工・調理する食品機械などへの要求も高まりを見せている。さらに衛生面から食器や調理器具を洗浄するための洗浄機――サニタリー製品も重要なアイテムとなってきた。

食品機械4,400億円、厨房機器6,500億円の市場
厨房機器は、レストラン・フードコートなどの外食産業、スーパーマーケットや持ち帰り弁当店などの食品小売業、学校・病院・工場などにある給食施設でも使われている。ガスレンジや焼物器などの加熱調理機器類、冷凍・冷蔵庫などの低温機器類、食器洗浄機などの洗浄消毒機器類、瞬間湯沸器などの給湯関連機器類のほか、流し台や調理台などもある。
また、食品機械・器具および装置は、農産物・畜産物・水産物を加工処理し、これを多種多様な食品・飲料・調味料などに調理・生成するための工程で用いられる。精米麦・製粉・製麺・水産加工・肉類加工・飲料加工・乳製品加工・製パン製菓・醸造用機械などがあり、新しい用途が生まれるたびに便利な機械が生まれている。
こうした厨房機器・食品機械は、消費者の“食”の多様化に対応するため、次々と種類を増やし、用途も拡大している。昔はガスレンジと冷蔵庫、流し台などの台所用品があればどんな料理でもできたといわれる。特に、腕のある料理人の手にかかれば、どんな食材からでも素晴らしい料理ができるといわれてきた。しかし、“食”を求める人々の数が圧倒的に増えてくると、食材の加工や調理も、料理人が腕を振るう時代から機械で調理する工業化の時代へと変化していった。
さらに真空・冷凍技術が進歩することで世界中の素材が手に入るようになり、長期保存も可能になってきた。それらを使って「レストランの味」を出す食品加工工場が生まれ、さまざまな厨房機器・食品機械が大型化・システム化されるようになっていった。
さらに、女性の社会進出や単身世帯の増加などにより、外食への依存度は年々上昇してきた。近年は節約志向により外食産業は低迷しているものの、その一方では惣菜・宅配食材・宅配弁当などの「中食」が増加してきている(グラフ)。
一方、業務用厨房機器では、蒸気と加工時間を数値でコントロールする制御技術が開発され、スチームコンベクションオーブンが誕生したことがひとつの転機となった。それ以降は加熱するだけでなく、熱を使って解凍、煮る、焼く、揚げる、蒸すなど、調理の領域は拡大していった。冷蔵庫・冷凍庫・製氷機なども厨房機器に含めると、種類も膨大になる。
日本で販売されている厨房機器のアイテム数は3,200以上ともいわれている。さらに機械・機器の製造に関わる企業数も、工業統計調査によると、たとえば食品機械では4人以上の従業員を有する事業所数は817カ所、従業員数は1万4,964人を数え、全体的には中小規模のメーカーが多い。食品機械の業界団体である一般社団法人日本食品機械工業会に加盟している会員は163社。一般社団法人日本厨房工業会の会員企業も、大手企業が営業所単位で加盟している分を除いても200社弱になる。そのうち、年商100億円を超える企業は7社、市場占有率も約43%と低い。
業務用厨房機器の国内市場規模に関しては公的な統計資料はない。しかし日本厨房工業会の資料などから推計すると、冷蔵庫・冷凍庫・製氷機などを除く加熱調理機や調理台などで、ここ10年ほどは年間4,000億円前後。冷蔵庫・冷凍庫・製氷機などを加えると6,500億円前後である(生産額)。また、食品機械の市場規模は、日本食品機械工業会の統計によると約4,400億円(販売額)。両者を合わせると1兆900億円にのぼる。 ...

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