特集 外需を取り込みグローバル化する台湾板金業界

デザインカバーの設計・製造にチャレンジ
次は曲げ工程の自動化も視野に

炬將科技股有限公司(JU JIANG SCIENCE)



工作機械生産で世界5位の台湾
炬將科技股份有限公司の本社工場の前に立つ林忠任董事長(右)と林原正総経理(左)炬將科技股有限公司の本社工場の前に立つ林忠任董事長(右)と林原正総経理(左)
台湾は世界第5位の工作機械生産国。台湾の工作機械総生産額は50億ドル(約5,000億円、1ドル=100円換算)で、2011年までの平均年間成長率は約24.58%だった。しかし、世界同時不況によって台湾の工作機械生産は、2012年第4四半期から一転、マイナス成長となり、2013年第1四半期は年率換算で約19.12%のマイナスとなった。
もともと台湾では工作機械産業は重要な産業であり、2015年には年間売上高100億ドル(約1兆円)を目指している。現在、台湾国内には約700社の工作機械・関連機器メーカーがある。台湾の工作機械業界団体、台湾区機器工業同業公会(TAMI)が2011年に発表したデータによると、機種別の生産社数はマシニングセンタ225社、フライス盤237社、研削盤128社、汎用旋盤230社とある。それだけに工作機械に欠かすことのできない工作機械カバーは、板金業界にとっても重要な仕事であり、業種としても成長が見込めるため、工作機械カバーを製造する企業の数は多い。

キサゲ職人から板金企業経営者へ転進
現場は図面レスを目指しており、組立現場でも新商品のカバー組立時には端末に3次元モデルのビューワを呼び出し、画面でモデルの状態を確認しながら組立作業を進める現場は図面レスを目指しており、組立現場でも新商品のカバー組立時には端末に3次元モデルのビューワを呼び出し、画面でモデルの状態を確認しながら組立作業を進める
1991年に設立された炬將科技股有限公司は、受注する仕事の大半が工作機械カバーである。
2006年には、日本の大手工作機械メーカーと台湾の工作機械メーカーによる合弁企業(1997年に設立、以下、日系合弁企業)から、NC旋盤のカバー製作を一貫で受注。現在、それらの仕事が売上全体の30〜40%を占める。それ以外は、台湾国内の工作機械メーカー4〜5社から工作機械カバーの製作を受注している。
台湾で製造される工作機械は、旋盤・マシニングセンタ・複合加工機を中心にNC工作機械が多い。2008年のリーマンショック前までは、自転車・金型・自動車向けの工作機械を中心にした機種を生産してきた。しかし、リーマンショック後は、iPhoneに代表されるスマートフォン向けのタッピングセンタ、ドリリングセンタなどの工作機械が活況になっている。現在はカメラ・自動車・スマートフォン・航空機向け工作機械に対する需要が多い。
同社を創業した林忠任董事長は、もともと工作機械メーカーに勤めており、工作機械の精度を決定づけるキサゲ職人だった。ところが1980年代後半から工作機械もNC化が加速。「NC化が進むことで工作機械カバーに対する需要が増えるに違いない」(林董事長)と考えるようになって、1990年に会社を辞め、1991年に現在の会社を設立した。...

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