特集 〜次世代ブランクマシン活用事例〜

ACIES 導入で生産性が3倍以上にアップ
精密板金・プレス・マシニング・ワイヤ放電の複合加工に強み

株式会社 荏原精密



弱電関係の量産試作を得意とする精密板金サプライヤー
代表取締役社長の中島一郎氏代表取締役社長の中島一郎氏
(株)荏原精密は、弱電関係の量産試作を得意とする精密板金サプライヤー。板金だけでなく、プレス、マシニング、ワイヤ放電などの複合加工に対応できることが大きな強みだ。
主な製品は、業務用コピー機・プリンタといったOA機器関連、自動改札機・券売機・郵便仕分け機といった社会インフラ関連、現金処理機や紙幣計数機、測定器などの筐体やメカ部品。1年ほど前からは、自動車用試作部品や鉄道車両用内装品なども手がけるようになった。
現在の得意先は50社前後。このうち大手OA機器メーカーの1社で売上全体の50%近くを占め、さらに大手電機メーカー、自動車試作部品メーカーを合わせた3社で全体の60 〜 70%を占める。
一番の得意先である大手OA機器メーカーとは、1972年の創業から現在まで取引を続けている。創業当初は、量産品のプレス加工を中心に手がけてきた。1988年頃からは、得意先が量産品を海外生産へと移行していったことをきっかけに、プレスから精密板金へとシフト。それまでは量産9、試作1の比率だったのが、精密板金へとシフトしていくことで徐々に試作のウエイトが高まり、現在では量産3弱、試作7強。売上全体に占めるプレスの比率は5%以下になっているという。

新工場を設立―― 2つに分かれていた工場を統合
ACIESでブランク加工後、表面・裏面それぞれに絞り加工を行った製品(SECC-CF・板厚0.8 o)ACIESでブランク加工後、表面・裏面それぞれに絞り加工を行った製品(SECC-CF・板厚0.8 o)
「昨年10月、念願だった第1工場と第2工場の統合をようやく実現できました」と中島社長は感慨深げに語る。
これまで同社の第1工場では、営業や生産管理といった事務部門と、プレス加工、機械加工(ワイヤ放電加工・マシニング加工)が中心。第2工場が板金工場で、板金プログラム工程、ブランク工程、曲げ工程を設備していた。
複合加工が持ち味の同社は、例えば第2工場でブランク加工を行ってから第1工場へ横持ちしてワイヤ放電加工機やマシニングセンタで追加工をしたり、第1工場でベンディング金型を切削加工して第2工場で加工したりするケースが珍しくなかった。中島社長は常々、こうした同社ならではの強みを、工場の統合によって強化したいと考えていたという。さらに、工場の統合により第1工場と第2工場で重複している設備を集約することで、スリム化を図る狙いもあった。
工場の統合へ向け、同社は2008年春に第1工場の隣地を取得。しかしその年の秋に発生したリーマンショックの影響で受注量は半減し、新工場設立の計画は凍結せざるを得なかった。厳しい経営環境のもと、3勤4休の勤務体制や人員整理、減給、経費節減などで対応した。
2010年末頃になってようやく底打ちした感触を得たため、計画を再始動。しかし2011年春、新工場の確定見積りが提示された日に東日本大震災が発生し、工場建設どころの話ではなくなってしまった。
中島社長は一時は状況を悲観して「いっそのこと買った土地も、第2工場以外の土地・建屋も処分して、無借金経営に入った方が楽になる」とも考えたが、それでも望みを捨てることはできなかった。その後も新工場建設をにらんで、設備の選別・統合などを行い、準備を進めていった。
2012年に入ってからは“簡易型による絞り加工”(後述)の仕事が軌道に乗り、再び売上が伸び始めた。「これからは良い方向へ進んでいく」と手応えを得た中島社長は、2012年2月半ばから計画を再々始動、約半年後の9月に新工場を立ち上げた。...

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