板金論壇
「全体最適」を考えたモノづくりを進める

『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫



「全体最適」を意識した提案が求められる
最近、大手企業の設計者や購買担当者とお話をすると「全体最適」という言葉をよく耳にするようになった。部品一点一点をVA/VEしてコストダウンを図る「部分最適」も必要だが、製品全体としての最適化を、どこまで考えるかがバイヤーに求められていると言われる。そういう意味ではサプライヤー側でも「全体最適」を考えた提案ということを考えていく必要性が出ている。
ともすると我々を含め、板金加工に関わっていると「すべてを板金に置換するとどうなるか」という観点で設計提案を考え、工法・加工技術を検討する。しかし、機能・性能・原価を満足させられても、製品としての質感や意匠性を考えた時に本当に板金に置換した方がよいのか、という判断は必要になる。板金を樹脂や炭素繊維(CFRP)に置き換えるとどうなるのか、という問いかけも求められる。
そういう視点では板金に拘泥せずに「全体最適」を意識した提案を心がけなければ、厳しい受注競争で生き残っていくことは難しくなる。

加工技術に造詣の深い設計者
過日、ある中堅機械メーカーの設計課長と調達課長にお会いして、最近の部材調達の動向をヒアリングする機会を得た。意外だったのは設計課長の方の知識が大変広く、板金は言うに及ばず、金型・プレス加工・鍛造などにも精通され、工法検討をしっかりおやりになっていたことだ。こちらが板金の優位性を持ち出しながら、設計者の経験を確認しようと質問を行うが、あにはからんや、「コスト面や加工性を考慮すると、そういう場合こそ、ロットは小さくても簡易型を製作してプレスで絞り加工した方が楽にでき、見栄えも良くなる。金型を製作するというと、調達は『型費の償却が難しいので板金で対応を考えて』というが、積層で型をつくればコストも時間もかけずに所要の品質で加工できる。これからの設計者には、今までの常識を覆すくらいの幅広い加工知識が必要になってくる」と設計課長は語ってくれた。...

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