特集 〜モノづくりアイランド・九州〜

切磋琢磨し研鑽を積む九州の板金業界と、業界をリードする九州シートメタル工業会



「国際リニアコライダー」の誘致に期待が高まる
●グラフ 九州地域と全国の鉱工業生産指数(季節調整済、2005年=100)/九州経済産業局、経済産業省●グラフ 九州地域と全国の鉱工業生産指数(季節調整済、2005年=100)/九州経済産業局、経済産業省
九州経済産業局は6月13日に発表したマンスリーレポートで、「九州の経済には持ち直しの動きが見られている」との景気判断を行った。鉱工業生産指数の推移(次ページグラフ)を見る限り、九州地域は常に全国平均を上回る伸び率を示しており、九州経済が着実に回復に向かって歩みを速めていることがわかる。
筑豊に代表される石炭、それを原料とする製鉄業、それから造船、自動車、そして半導体・液晶と、日本を代表する産業地帯として、"九州"は世界から注目され続けてきた。さらに最近では、経済発展が著しい東アジアのゲートウエイとして、また、アジア内需を取り込む製造基地としても注目を集めている。
直近の話題はなんといっても、宇宙誕生の瞬間のビッグバンを再現する次世代加速器「国際リニアコライダー」(ILC)の建設構想で、佐賀県と福岡県が共同で両県にまたがる脊振山系(せふりさんけい)への誘致活動を強化していることだ。
リニアコライダーは全長30km超のトンネルで電子と陽電子を衝突させ、宇宙誕生の謎を探る研究施設。科学の未来に挑戦する国際研究教育特区を目指す九州各県が、経済界や大学などと連携しながら推進している「サイエンスフロンティア九州構想」の目玉に位置づけられている。実際にリニアコライダーの研究施設を誘致できれば、施設建設費だけでも数兆円が投じられる。さらに、全世界から研究者や関連企業がこの研究施設に集まることによる経済効果も大きい。今回の特集の取材中も、何度となく「リニアコライダーの誘致に期待する」という板金企業の声を聞いた。

1980年代――「シリコンアイランド」の"清潔板金"へ
九州でいわゆる"精密板金"の仕事が始まったのは、半導体メーカーが設備する製造装置のメーカーの工場が九州に集積しはじめ「シリコンアイランド」と呼ばれるようになった1980年代に遡る。
それまで九州地域の板金業界では、配電盤や建築板金、造船関連といった地場産業に深く関わる業種からの仕事が主であり、そこに食品機械や工作機械、鉄道車両といった業種の仕事が徐々に発注され、量的に拡大していった。それが1980年代に入り半導体そして液晶がブームとなって以降は、半導体・液晶製造装置に関連した精密板金、特にステンレスを素材とする"清潔板金"が中心を占めるようになっていった。...

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