板金論壇
成長戦略の要は製造業の再生と現場力の強化

『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫



中身の薄い成長戦略
アベノミクスの3本目の矢である「成長戦略」が発表された。その骨子は「健康長寿社会・再生医療・創薬」「労働政策」「育児支援」「インフラ輸出・イノベーション支援」「民間設備投資促進」「農林水産業」「クールジャパン」「規制改革」「国家戦略特区」「電力システム改革」「インフラ整備」「家計」――などで構成されている。
しかし全体的には想定内の施策で、法人税減税のような民間活力を高めるための重要対策が盛り込まれなかったことなどから、為替や株式市場では「期待外れ」との評価を反映した相場展開となった。実態経済ばかりか、先行き経済にも不安が生じている。市場の反応を見て政府は急遽、投資減税などの追加対策を発表したが、肝心の成長戦略については後手後手の感を免れない。

大学から加工を解明する研究が減っていく
それにしても「国民1人あたりの所得を10年後に150万円増やす」という目標を掲げたものの、めぼしい対策はこれからというのが現実のようだ。特に7月号で紹介した「Tech Shop」のような、製造業を活性化するための具体的な対策が盛り込まれていないのが気になる。
先日も工学系大学の先生方との懇談会で、成長戦略が話題となった。その時、多くの先生方から「経済成長のためには第2次産業である製造業を活性化しなければならない」「日本の製造業――モノづくりをこれからどうしていくのか、出口戦略が見受けられない」との指摘があった。
2000年以降、文部科学省の指導もあって、大学では理工系学部から「生産機械工学科」「精密機械工学科」「塑性加工学科」などの科目・カリキュラムが消えていく傾向が顕著になっている。科目名称が「生産システム工学科」などに変更され、その中の一部として残存するものの、機械加工や塑性加工そのものを学んだり研究したりする機会はドンドン減ってきているという。名称にこだわることはないが、実際の加工現場で自ら機械を操作し、実習する機会が少なくなり、地道な研究を選択する学生の数も減ってきているという。職業訓練を行うポリテクセンターなどでも「板金科」などがなくなり、板金を教える先生の数も少なくなってきたという。...

つづきは本誌2013年8月号でご購読下さい。