〜Sheetmetal World〜

転換期を迎えた中国板金事情
「日本化」を進める中国の板金工場日本の仕事を中国で加工・サブアッシー後に納品するケースも増える



経済モデルの"モデルチェンジ""アップグレード"を目指す中国
上海市内を走る地下鉄の構内にはホームドアが設置されている上海市内を走る地下鉄の構内にはホームドアが設置されている
昨年9月の訪中から7カ月の間隔をあけて、4月に北京、6月に上海を取材した。尖閣諸島問題の膠着状態が続く中、3月の全国人民代表大会(全人代)で習近平主席が誕生し、中国の新しい指導部によって今後10年の中国の政治・経済がどのように変化していくのか――という興味を持って訪れた。
北京へ向かう直前の4月15日、中国国務院は2013年1-3月期のGDP成長率を発表した。習近平体制になって最初の発表だけに注目されたが、物価変動を除いた実質GDP成長率は前年同期比7.7%で、4期連続の8%割れとなった。中国政府は、鉄道などの公共投資を上積みすることで景気回復を目指しているものの、実体経済は足踏み状態が続いている――というのがマクロ経済の景況感だった。
北京では4月22日から始まった「中国国際工作機械展覧会」(CIMT 2013)の取材が中心だった。ここで、主催者の中国机床工具協会の常任副理事長である呉泊林ウー・ボーリン氏をはじめとする業界指導者が口々に述べていたのが、「自動化」「知能化」そして「中国経済の"モデルチェンジ"と"アップグレード"」という言葉だった。「自動化」「知能化」は言葉どおりの意味だが、「モデルチェンジ」と「アップグレード」は習近平体制になってから目立つようになった表現だ。

輸出主導の「世界の工場」――格差是正が大きな課題に
上海市内の地下鉄の自動改札機上海市内の地下鉄の自動改札機
これまでの中国経済は、1978年の改革開放以来、社会主義的市場経済を導入し、公共投資による内需振興と低廉な人件費を武器とした「世界の工場」として輸出主導で経済発展を加速してきた。これによって外資系企業が、上海を中心とする長江デルタや深、東莞から広州にいたる華南地区の沿岸部に工場を立地し、そこが中核となって製造業が発展。完成した製品を輸出することで外貨を稼ぐビジネスモデルが長く続いてきた。しかし、それによって沿岸地域と内陸地域との間では人件費をはじめとする様々な格差が生じてきた。
内陸からは「民工」と呼ばれる農村籍の出稼ぎ労働者が仕事を求めて沿岸地域に移動してきた。しかし、「民工」の待遇を巡って様々な社会問題が発生し、社会不安の基になっていった。そのため、中央政府は南北格差を是正するため、公共投資を内陸地域の発展に使う「西部大開発計画」をスタートした。さらに、北京と地方の中核都市を結ぶ高速鉄道、高速道路網の整備、そして製造の源である電力を安定的に確保するため「西電東送」などの計画などがスタートすることになった。
こうした公共投資が地方政府と一体で行われることで、内陸部でも産業が活発化していった。人件費が高騰し、バブル経済に突入し始めていた沿岸部を避け、外資を中心とする多くの企業が内陸部に積極的な投資を行うようになっていった。これにより、これまで出稼ぎに頼っていた内陸地域の労働者にも、地元で働けるチャンスが巡ってきた。...

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