特集 〜"変化"しつづける精密板金のメッカ・京都〜

京都とタイ――国境を越えて連携し、フレキシブルなモノづくりに対応
プログラム教育・マシンメンテナンスなどAMADA(THAILAND)からの支援・教育をフル活用

有限会社 小林製作所



グローバル意識が高い若手経営者
代表取締役の小林裕明氏代表取締役の小林裕明氏
「最適なモノづくりとは、適地適産の考えに基づき、どれだけフレキシブルな対応ができるかです。その考えから、2012年2月に生産拠点のひとつとしてタイ工場を設立しました。インフラさえ整っていれば、タイでも日本とそれほど変わらない環境でモノづくりができます。京都とタイ――生産拠点の場所が重要なのではありません。お客さまにとって、一番適した方法・場所で対応できるかどうかがポイントです」と代表取締役の小林裕明氏は語る。
(有)小林製作所は、京都府長岡京市にある板金サプライヤー。フォークリフト関連の仕事をメインに、自動車・照明器具・分析機器関連の部品製作など様々な分野の仕事を手がける。その一方で2012年2月には、タイ王国ラヨーン県に「Kobayashi Kako(Thailand)Co.,Ltd.」を設立。さらに小林社長は、工業用ゴム・各種金属部品などの製造・販売を行う大手商社のテクニカルアドバイザーも務める。

火災による工場全焼から再起を果たす
薄板・精密板金の仕事の取り込みに貢献したEM-2510NT薄板・精密板金の仕事の取り込みに貢献したEM-2510NT
同社は、小林社長の父である先代が1955年、プレス加工業として個人創業。1969年、現在地(京都府長岡京市)に移転し、(有)小林製作所に法人改組。この頃から板金加工業を中心とした業態にシフトし、パンチプレスやレーザマシンなども順次導入していった。
2003年には、先代の体調がすぐれなかったこともあり、当時25歳だった小林社長(現在35歳)が事業を引き継いだ。
社長就任後は、創業当初から手がけてきたフォークリフト関連(中厚板がメイン)の仕事のほか、薄板小物の部品加工、試作加工、照明器具関連などの仕事を積極的に取り込み、業容を拡大していった。
しかし、2006年12月に本社工場が全焼するという災難に見舞われ、同社は大きな決断を迫られた。
日本の本社工場で製作した溶接治具。このあとタイ工場へと供給される日本の本社工場で製作した溶接治具。このあとタイ工場へと供給される
「工場だけでなく、パンチングマシンEM-2510NTやベンディングマシンFBD-5012LDなどの設備も一部再起不能になりました。廃業もやむなしと考えたこともありましたが、いつまでも暗いことばかり考えていても始まりません。出火原因は放火ですが、結局のところ、自分たちの危機管理の甘さが遠因です。大きな代償でしたが、この火事の経験から徹底したセキュリティ対策やリスク管理の必要性を痛感しました」と小林社長は当時の心境を語ってくれた。
本社工場の再起を目指すにあたり、当初は中古機の導入も考えたというが「お客さまの多くは仕事を発注される前に、板金サプライヤーのWebサイトや工場見学などで保有設備を確認し、その会社の能力を判断する。中途半端な設備投資が一番よくない」と考え直し、加工マシンの新規導入を決断した。...

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