特集 〜"変化"しつづける精密板金のメッカ・京都〜

自社ブランド製品を本格展開
創業97年の老舗企業/高度な溶接技術とユニット製作を武器に時代の"変化"に対応

株式会社 北村工所



創業97年目――"変化"を繰り返してきた老舗企業
代表取締役の北村征志氏(左)、取締役会長の北村昭子氏(右)代表取締役の北村征志氏(左)、取締役会長の北村昭子氏(右)
「会社にも従業員にも自分自身にも、目に見える明確なかたちで"変化"をもたらすこと。それが今、最も大切なことだと感じています」と代表取締役の北村征志せいじ 氏は語っている。
(株)北村工所は今年で創業97年目と、100周年を間近に控えた老舗企業。日本には長寿企業と言われる100年企業が2万7,000社あるが、同社も間もなくその仲間入りを果たす。同社の97年にわたる足跡は、時代の変遷に対応して"変化"を遂げてきた中小製造業の象徴的な姿といえる。
同社は1916年(大正5年)に鍛冶屋として創業し、その後、高度な溶接技術を活かして、京都の老舗産業機械メーカーの仕事を中心に手がけてきた。1957年に法人化するまでは同メーカーの認定工場として操業してきたが、法人化して以降は、同メーカーの産業機械関連の仕事をメインとしながらも、少しずつ他分野の仕事も手がけるようになっていく。
ブランク工程にはレーザマシンFO-MU RI 3015 +LST- 3015 FOM 2(左)、FO-2412 NT+LST- 2412 FO(中央)、パンチングマシンEM-2510 NT(右)が並ぶ。ブランク工程にはレーザマシンFO-MU RI 3015 +LST- 3015 FOM 2(左)、FO-2412 NT+LST- 2412 FO(中央)、パンチングマシンEM-2510 NT(右)が並ぶ。
1997年には主要得意先メーカーの工場移転により、仕事量が大幅に減少。これが契機となり、同社のコア技術である溶接技術――特に産業機械の生産で培った真空気密溶接と、部品製作・外注手配・市販品手配・組立配線まで一括で対応できることを武器に、半導体・FPD製造装置関連、印刷機器、電機・電子部品関連などの分野へと進出し、得意先を拡大していった。
ITバブル崩壊後の2003年頃には、半導体・FPD製造装置や電機・電子部品関連の仕事が大幅に落ち込み、安定業種とされる医療機器、製薬機械、防災関連、食品機械の得意先を集中的に新規開拓し、リスク分散を図っていった。

防災関連・製薬機械など主要5業種
自社製品のひとつである米飯反転ほぐし機自社製品のひとつである米飯反転ほぐし機
現在の主要な得意先は、(1)防災関連、(2)製薬機械、(3)産業機械、(4)印刷機械・FPD製造装置関連、(5)搬送機器の大手メーカー5社で、それぞれが売上全体の15〜20%を占める。
(1)防災関連は、消防車向け外装ユニットの製作・塗装・サブアッシーまで行う。2003年頃の新規開拓の一環で、ユニット単位での一括受注に対応すると提案。防災関連は、加工不良が人命に直結することと外観品質が求められることから品質に対する要求が厳しく、新規参入のハードルが高いとされているが、同社の提案と高い溶接技術が評価され、現在では得意先メーカーの発注量ベスト5に入るまでになった。
(2)製薬機械は、錠剤・カプセルの生産ラインに設置される装置の部材製作を行う。薬品と接触する部分はオールステンレスのR形状で、薄板の歪みレスの全周溶接、ビードカット、表面バフ仕上げと、防災関連とは別の意味で高い溶接技術が求められる。...

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