板金論壇
経営者の意識をグローバル化してアジア内需を取り込む

『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫



円安は必ずしもプラスではない
円安は当面の目安とされていた1ドル100円を突破、一時的にリーマンショック前の安値水準に近づいた。ユーロに対しては1ユーロ130円台に入ったものの、リーマンショック前の安値、168円前後から比較するとまだ円高水準が続いており、為替市場では欧州金融危機への不安が継続していることがうかがえる。その反面、中国人民元や韓国ウォン、台湾ドルなどのアジア通貨に対しては、ほぼリーマンショック前の水準にまで下落した。
これを受け、株式市場は当面の目標とみられていた1万5,000円台を突破。一時は、小泉内閣時代の「いざなみ景気」時代につけたバブル崩壊後の高値を目指す雲行きとなった。実体経済は、2013年第1四半期のGDP成長率が0.9%(年率換算で3.5%)成長し、街角景気ウォッチャー調査などは、足元や先行きに対して期待値が先行していることを反映し、高止まりしている。
しかし、景気の先行指標とされる工作機械や鍛圧機械といった資本財受注の指標などを見るかぎり、1-3月期は前年同期比でマイナスとなっており、企業の設備投資意欲は景気回復への期待値とは必ずしも一致していない。板金業界でも「1-3月の受注は低迷しており、4月になって受注環境が一段と厳しさを増している」などと、先行きへの不安を募らせる関係者が多い。
今後、円安による鉄鋼などの原材料価格の上昇、そしてこの5月から始まった電力料金の値上げ、食糧などの輸入物価の上昇、賃上げなどによるコスト上昇圧力などから、企業経営を取り巻く環境は予断を許さなくなっている。円安による輸出拡大を期待する声も聞かれるが、自動車業界をはじめとする主要な産業は、適地適産による海外生産比率を高めており、財務省などが公表する大手企業の海外法人売上比率は四半期ごとに上昇している。円安は必ずしも国内製造業にとってプラスに作用するとは限らない。

「親方日の丸意識」が残る
中小製造企業の間からは、日本経済の基盤である製造業の将来を不安視する声が盛んに聞かれるようになっている。特に来年から消費税が段階的に引き上げられることについて、価格転嫁が得意先から認められるか危惧する声も聞かれる。下請取引に関する経済産業省や公正取引委員会の監視を強化して「下請けいじめ」が起こらないようにしてほしいと要望する企業・団体も目立っている。...

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