〜SHEET NOW〜

世界に誇る、 日本の炭素繊維産業を支える協力工場
精密板金・精密製缶・機械加工というハイブリッドな加工に専念

ファクシス 株式会社



炭素繊維の熱処理装置を試作開発
会長の石丸武史氏(左)と代表取締役社長の石丸泰豊氏(右)会長の石丸武史氏(左)と代表取締役社長の石丸泰豊氏(右)
ファクシス(株)は得意先企業の指導のもと試作を繰り返し、炭素繊維の熱処理装置の実用化に貢献した。この熱処理装置は全長が数十mにもなる構造物である。
炭素繊維は1970年代初頭に工業生産が開始されて以来、スポーツ用品・航空機・自動車などの産業分野で適用が拡大。特に航空機分野では、軽量化による燃費低減とCO2排出量削減に貢献する環境対応素材として注目され、普及が進んでいる。
炭素繊維の熱処理装置の設計には、200〜300℃の熱風を吹き出すノズル、吹き出し口の形状、熱風のかけ方、炭素繊維を巻き取るスピードなど、各種パラメータを考慮する必要がある。
得意先企業では3次元CADで設計した製品モデルを使い、コンピュータシミュレーションで構造体の強度や設定温度、熱風の流量や風圧、巻き取りスピードを解析している。それでも、製造現場では齟齬が発生した。トライ(製作)&テスト(測定)を何度も繰り返し、徹夜作業が続いた。特に、熱伸びや厚さの精度、断熱材・ガスケットの選定に苦労した。
それを成功に導いたのは、石丸武史会長の創意工夫と経験、匠のノウハウ――ノズル先端の吹き出し口の形状をベンディングマシンの曲げ加工で正確に製作する職人のスキルだった。
同社はその後、循環用ダクトやファンなどの付帯設備も設計・製作するようになっていった。

液晶の保護膜となるTACフィルムの乾燥機も開発
2008年に導入したパンチ・レーザ複合マシンEML-3510NT 2008年に導入したパンチ・レーザ複合マシンEML-3510NT 
炭素繊維の国内メーカーは主に3社あり、受注は不定期。受注を平準化するため、液晶ディスプレイには欠かせないTACフィルムの乾燥機に応用していった。
TACフィルムは、もともと写真用フィルムの基材として開発された。しかし、不燃性・透明性・表面外観・電気絶縁性などに優れることから写真用フィルム以外の用途開拓が進み、液晶ディスプレイの構成部材である偏光板の保護膜として用いられるようになった。TACフィルムの製法は、ポリマーを溶剤に溶かして広い板の上に薄く広げ、溶剤を揮発させながらフィルムを製作する溶液流延製膜法が一般的。そして、同工程にはフィルムを乾燥させる乾燥機が必要となる。
第23回優秀板金製品技能フェアで銅賞を受賞した「電気配線カバー」第23回優秀板金製品技能フェアで銅賞を受賞した「電気配線カバー」
この乾燥機も炭素繊維と同様にフィルムの品質――特に厚みのコントロールが大切で、ここでも熱風の温度管理・風量・風圧・フィルムの送り速度などのパラメータ制御が重要となる。
海外の液晶製造装置メーカーは韓国・台湾・中国などにあるが、TACフィルムの生産量は日本が圧倒している。韓国の製造装置メーカーも、使用するTACフィルムの99%以上を日本からの輸入に頼っている。...

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