〜視点〜

歴史に学び、日本人の誇りと勇気を持ち、
己の役割を果たすことが求められる

年末に行われた総選挙は自民党の圧勝に終わった。3年前、政治主導を旗印に政権交代を果たした民主党は、ガバナンス能力が乏しく党内闘争に明け暮れ、国民の政治改革への期待を裏切り続けた。内政・外交でも成果は少なく、今回の選挙で自滅した。しかし、だからといって自民党政権が国民の全面支持を受けているわけではない。1票の格差是正が成されていない今の小選挙区制度がもたらした勝利、といっても過言ではない。比例区の得票数では40%弱にしか過ぎず、第2位の民主党や第3位の日本維新の会などと比べ、議席数ほどの差は見られない。自民党が過去の過ちを繰り返すようなことがあれば、民意は再び政権交代を求めることになるだろう。
政権が代わることで、経済界は大幅な金融緩和によるデフレ脱却への期待から株価が先行して上昇、夏頃までには1万5,000円台まで上がるという観測すら出ている。年始に行われた業界団体の賀詞交歓会でも、新政権への期待度がヒートアップした。大型補正予算や本予算による公共投資などの真水効果で、景気浮揚を期待する声が多かった。1991年のバブル崩壊から20年、日本経済は長いデフレ状態にある。この間に、世界経済は中国をはじめとした新興国が経済発展を遂げ、日本の存在感は希薄になってしまった。モノづくり大国として世界に信頼を与えてきた「Japanブランド」は色あせ、薄型テレビをはじめとした家電製品は韓国や台湾、中国の追い上げを受けている。ソニー、パナソニック、シャープはブランド力の低下もさることながら、シェア低下による売上の大幅減と価格破壊による採算性の悪化で大幅な経常赤字を出し、会社経営が危機的な状態に置かれている。20年前には考えられなかったことである。しかし、時代は変化する。変化に対応できなければ、淘汰される。日本企業にとっては厳しい時代がやってきたと言わざるを得ない。
歴史をひも解けば、1868年の明治維新から145年。1894年の日清戦争、1904年の日露戦争を経て国力を備えていった日本は、世界の列強の仲間入りを果たした。1945年の第2次世界大戦での敗戦を契機に、驚異的な戦後復興と高度経済成長を果たし、エズラ・ヴォーゲルの著書にあるとおり『JapanasNumberOne』にまでなった。そして1991年のバブル崩壊から20年を経て“今”を迎えている。歴史の流れから見れば、たかだか20年。時代は30年、50年で潮目が大きく変わる。潮目の変化を見極めるためにも我々は、常に歴史に学ぶことが必要である。
歴史に学ぶたびに思うことは、その時代を生きてきた先人たちのすばらしさである。日本人としての誇りと勇気を持って、自らの役割を生きている。日露戦争当時、日本海軍に秋山真之がいても、203高地で尊い多くの屍を築いても、戦いに勝利しなければ、今の日本の発展はなかったかもしれない。むろん度重なる“勝利”によって軍部の勢力が強くなり、第2次世界大戦へと向かっていったことも事実である。しかし、それは変えようのない史実であって、我々はそこから学ぶ以外に道はない。少なくともその時代を生きてきた人たちが自らを信じ、日本人の誇りと勇気を持ち続け、役割を果たしていったことは間違いない。
我々は歴史に学び、日本人の誇りと勇気を取り戻して己の役割を果たしていく必要がある。それは日本人として、「日本という国」に生まれたことに感謝し、目の前にある課題を1つずつクリアすることである。モノづくりに近道はない。真っ直ぐなものは真っ直ぐに、丸いものはどこまでも丸くつくるのがモノづくり。モノづくりの原点に立ち返って、前を見続けていただきたい。日本製造業の復権なくしてこの国の発展はない。誇りと勇気を取り戻し、この国の発展に貢献しましょう!