〜2013年を展望する〜

I 新春アンケート調査
中国リスクの顕在化で国内回帰志向へ
2013年の景気見通しは「悪化する」「横ばい」「見通しがつかない」が90%に迫る



2013年がはじまった。
年末に行われた総選挙で政権の枠組みが変わり、4年前に「脱官僚、政治主導」を掲げて政権交代を実現した民主党政権が、大きな政績を残さないままに終焉した。自民党を主体とする新政権では「第3極」勢力の意向を汲みながら、地方分権を視野に入れた政治を行うものと見られる。
財政が破綻する中、2014年度には消費税率の改定が行われ、増税による財源確保が重要な政治課題になることは間違いがない。消費増税前の駆け込み需要で、2013年は一時的に消費が拡大すると考えられている。しかし、その反動減で2014年以降はマイナス成長に陥る可能性も懸念され、予断を許さない。また、尖閣問題で冷え込んでいる日中の政治・経済の関係修復が進むのか、それとも現状のままなのか――こうした日本経済の先行きに影響を及ぼす課題が山積している。
その一方で、2000年代に入って顕著となっている経済活動のグローバル化に対応するため、モノづくりも“適地生産”という考え方が一般的となってきた。製造業の潮目の変化が鮮明となって、板金業界でもアジア諸国へ工場進出する企業が増えてきた。その反面、尖閣問題を契機にカントリーリスクを考慮して海外への工場進出を断念し、国内に残る仕事を積極的に受注するため、生産設備の見直しや営業開拓を積極的に行う企業も目立っている。
こうした変化が進む中、小誌では毎年恒例の「新春景気見通しアンケート調査」を11月末に実施した。今回は小誌の定期購読者と、これまで取材に訪問した企業の中から無作為に350社を抽出し、電子メールとFAXによるアンケート調査を実施した。
今回は、変種変量生産・高品質・短納期がますます求められるようになっていく国内市場で競争力を高めるために工程統合・複合マシンが注目を集めていることから、新たに「工程統合・複合マシン」についての設問(Q7)を用意した。また、「新規参入を検討または注目している分野」についての設問(Q12)、尖閣問題で急浮上した「カントリーリスク」についての設問(Q15)を新設した。
昨年、東日本大震災の影響で新設した「BCP/BCM」についての設問は今年も継続した(Q16)
期限までに回答のあった96社、回答率は27.4% となった。
以下、各設問に対する回答結果と、そこから読み取れる業界トレンドについてまとめた。

Q1 2013年の国内景気の見通しについて
◆ その他コメント◆ その他コメント
・「諸問題山積しているが、新政治に期待する」
・「現在の政治の状況の変化により変わってくる可能性があり読めないのと同時に円高、TPPの関係でも変わってくるため、見通しがつかない」
・「国政の行方と為替動向でいかようにでも変わると考えている」
「横ばいが続く」がトップ
回答の中で多かったのが「横ばいが続く」「見通しがつかない」で、それぞれ37.5%(前回比7.5ポイント増)と31.3%(同8.8ポイント増)となった。また、「悪化する」は18.8%(同1.3ポイント増)となっており、「好転する」はわずか3.1%(同4.4ポイント減)だった。
「悪化する」「横ばいが続く」に「見通しがつかない」を含めると全体の87.5% が景気の好転に対して否定的ということになる。前回(2012年)と比べて17.5ポイント増となった。
「その他コメント」としては、「政治の状況の変化により変わってくる可能性がある」など政情についてのコメントが目立った。

Q2 今後の景気回復のポイントとして注目している点
海外市場を重視する傾向が顕著に
この項目では、注目する順番に5つ選んでもらい、ポイント換算して全体に占める割合を算出した。
回答が最も多かったのは前回同様「円高の推移」の19.3%(前回は「為替の動向」)。「中国などアジア地域の景気」「米国の景気」「欧州諸国の景気」が上位に入り、グローバル経済の影響を重視する傾向が顕著。「政府の景気対策」と「震災の復興需要」は意外に伸びず、政策や復興需要に対する期待の小ささが鮮明になった。

Q3 経営上の課題について
悪化する経営環境
この項目は毎年大きくは変化しておらず、「収益性の悪化」「販売(受注)競争の激化」「売上(受注)の減少」が上位に入った。グローバル化が進展する中で受注競争が一層厳しさを増しており、価格の重要度がますます増している。そのため、利益率を度外視して継続取引を望む板金企業の苦労がよく表れている。
その一方で目立ったのが「新分野開拓」。前々回(2011年)7.5%、前回9.6%、今回13.6% で2位と着実に伸びている。どういった業種が注目を集めているかについてはQ12を参照のこと。...

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