〜Event〜

「JIMTOF 2012」開催
“モノづくりの復権”を感じさせる盛況ぶり
● デザインカバーの採用は板金業界の追い風になるか?



来場者総数は前回を12.7%上回る
昨年11月1日から6日までの6日間、東京ビッグサイトで「第26回日本国際工作機械見本市」(JIMTOF 2012)が開催された。JIMTOF開催50周年となる今回は、世界21カ国・1地域から816社が、5,092小間(4 万5,828m2)に出展した。
日本経済を取り巻く環境は一段と厳しさを増している。ドバイショックや欧州債務危機からの回復のため、景気のてこ入れを行い金融緩和を実施するものの、景気回復の兆しが見えないアメリカ経済。尖閣問題でギクシャクする日中関係。さらに中国をはじめとした新興国経済の減速――それだけに今回のJIMTOFは盛り上がりに欠けるのではないかと懸念され、来場者数も前回(2010年)の11万人と同程度であれば十分と見られていた。
ところが開幕してみると、来場者総数が15万5,416人と前回を12.7%上回り、会期内重複を除いた来場者数も12万8,674人と前回を9.4%上回る盛況ぶりだった。特に開催2日目と3日目はいずれも3万人を超える来場者数となった。
工作機械、鍛圧・板金機械の主要なメーカーが出展した東ホールでは、通勤ラッシュ並みの人出となった。特に通路側にシアターを設けているブースでプレゼンテーションが始まると、通路には足を止めて聞き入る来場者があふれ、歩くことも困難な状態となっていた。そんな光景が随所で見られ、来場者の関心の高さが目立った。

腹を固めた中小製造企業経営者
アマダのプレゼンテーションに足を止めて聞き入る来場者が通路にあふれていたアマダのプレゼンテーションに足を止めて聞き入る来場者が通路にあふれていた
「景気がよくないので情報収集を兼ねて来た」という来場者も見られたが、半数以上の来場者が異口同音で語っていたのは次のような内容だった。
「リーマンショックを契機に製造業の海外移転が加速し、国内産業の空洞化が心配された。しかし、今回の日中問題に見られるように、カントリーリスクが高い国・地域への投資は中小企業にとってあまりにもリスキー。それならばコストは厳しいが、国内に残る仕事を受注していく、そのために自社でしか加工できない製品を受注しよう、と考える同業者が増えている。日本の製造業を支える我々のような中小製造企業が腹をくくって、国内に残ることを決断したというのが本音。そのためには、どんな設備を導入すればいいのかを検討するために来た」(埼玉県の板金加工企業)。
このように、来場者が増えた背景には「国内への製造回帰」の兆候がうかがえた。
研究テーマをパネル展示していた大学教授は「立ち止まってパネルを見入っている来場者、熱心にデジカメでパネルを撮影していく来場者も見受けられ、研究内容についての質問も頻繁に受けました。中小製造企業の方々が産学連携に積極的になってきた感があります」と語る。
また、台湾から来場したという金型加工企業の経営者が「台湾製の工作機械も精度・品質は向上しているが、超高精度加工に関しては欧州製や日本製の方が進んでいる」と語っていたように、円高というハンデはあるものの、海外ユーザーからの“Made in Japan”への信頼はまだまだ高い。出展者の「アジア内需を取り込む」という意気込みも、今回のJIMTOFを盛り上げた要因のひとつだった。
金融庁の施策も設備投資意欲に一役
工作機械業界ではデザインカバーの採用が拡大している工作機械業界ではデザインカバーの採用が拡大している
会場では、製造業を主なクライアントとする顧問税理士も、得意先の社長と一緒に来場していた。
「景気の悪化を受け、11月1日に金融庁より金融担当大臣談話『中小企業金融円滑化法の期限到来後の検査・監督の方針等について』が公表された。これは2013年3月末で期限切れとなる中小企業金融円滑化法によって、4月以降に中小零細企業の倒産急増懸念が取りざたされ、中小企業団体から円滑化法延長希望論が出ていたこととも関連する。今回の方針は実質的な円滑化法の延長であり、金融機関の早急な債権回収行動をけん制する内容となっている。これによって中小企業の資金繰りの悪化は回避され、そうした点も設備投資を積極的に考えようとする経営者の肩を押していると思われる」とコメントしていた。...

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