板金需要が拡大する医療機器業界

モノづくりの理念は「品質を最優先」
2回の試作で、製造性・メンテナンス性・品質・安全性・機能を検証

サクラ精機 株式会社



検査機器事業本部・第二製造部の高橋富男部長(左)、柿沼建副本部長(中央)、製造二課の宮入好文課長(右)検査機器事業本部・第二製造部の高橋富男部長(左)、柿沼建副本部長(中央)、製造二課の宮入好文課長(右)
140年以上の歴史を持つ医療機器メーカー
国内初となる顕微鏡を開発したサクラ精機(株)のルーツは、1871年に薬種商「いわしや」が東京都日本橋で創設した医療機器部門まで遡り、140年以上の歴史を持つ。
現在の主力事業は2つ。ひとつは、人体あるいは動物の臓器を検体として診断・研究を行う病理検査や、尿・細胞などを採取して検査する「病理・細胞診検査装置(医用検体検査機器)事業」。もうひとつは、メスや手術用ハサミといった医療機器などの滅菌・消毒を行う「洗浄・滅菌装置事業」で、いずれも国内トップシェアをほこる。
2011年度の売上高はサクラ精機単体で約140億円。このうち病理検査の処理工程全般に対応する「ティシュー・テック」シリーズを主力に持つ医用検体検査機器事業の売上高は約40億円で、国内売上・海外売上ともに堅調に推移している。
EML-3510NT(TK+MARS)は、大幅な省力化と夜間稼働などで同社の在庫削減に貢献EML-3510NT(TK+MARS)は、大幅な省力化と夜間稼働などで同社の在庫削減に貢献
医用検体検査機器事業の海外売上比率は約70%。サクラグループである海外のグループ企業4社を基点にグローバル展開をしており、米国・欧州・中国・台湾・韓国・シンガポールなどの占める割合が高い。
同社は事業部制を採用しており、「販売事業部門」は東京本社(東京都練馬区)、「製造事業部門」は長野本社(長野県千曲市)に置いており、国内にある4つの製造拠点は、すべて長野県千曲市に集約している。
今回取材に訪れた長野屋代工場は板金・機械加工部門として、医用検体検査機器の機構部品をメインに製作。長野屋代工場や協力工場で製作した部材は長野本社工場に納入され、完成品に組み立てられたのち、出荷される。

検体検査機器の高価格化が進む
「ティシュー・テックプリズマ」は、プログラムに従って自動で「染色」を行う「ティシュー・テックプリズマ」は、プログラムに従って自動で「染色」を行う
水・脱脂・パラフィン浸透」「包埋」「薄切」「伸展」「染色」「封入」などがあり、同社はこれらの工程に対応する機器をラインアップしている。
医用検体検査機器のメインユーザーは病院や研究機関。しかし最近は、病院の統廃合が進み、病院数が減少してきているという。医療内容の質の充実に対するニーズが高まり、病院側はより高度で高額な医療機器の設備が求められ、財政的に圧迫されるようになったことも理由のひとつだ。
同社の検査機器事業本部の柿沼建副本部長は「業界全体では、国内向けの医用検体装置の生産台数は減少傾向にありますが、装置単体の高度化・高価格化で生産額は伸びています。当社であつかう製品は新規需要が20%、更新需要が80%。統廃合後の新病院設立時には、新規需要が生まれます。また、国や病院などを中心に、がん予防に対する取り組みは年々強まり、当社の製品に対する需要も増しています」と言及する。
その一方、検体検査機器事業の売上の約70%を占める海外市場については「今後、特に注目している国・地域は、医療分野に国の予算が注ぎ込まれてきている東欧・アフリカ・ロシアなどです。中国では、2012年3月に中国・江蘇省泰州市に「中国医薬城(China Medical City)」が設立されたことを受け、サクラグループの櫻花医療科技(泰州)有限公司の本社機能を北京市から泰州市へ移管。直接販売ができる体制を整え、販売力強化に取り組んでいます」と語る。...

つづきは本誌2012年12月号でご購読下さい。