板金需要が拡大する医療機器業界

高い品質が求められる医療機器業界の板金製品
多品種少量生産・高精度加工への対応から複合マシンが主力に



高齢化・人口増加を背景に成長を続ける医療機器分野
日本国内の医療機器市場規模推移日本国内の医療機器市場規模推移
厚労省「薬事工業生産動態統計年報」より作成
次世代の基幹産業として、医療機器分野に注目が集まっている。世界の医療機器市場は、先進国の高齢化や新興国での人口増加を背景に拡大傾向にある。
国連の予測では、2040年には先進国のみならず、中国やロシアといった新興国でも高齢化率(総人口に占める65歳以上の人口比率)が21%を超える見込み。中でも日本は、世界でも突出した「高齢化先進国」で、2040年には高齢化率が40%を超えるとみられている。
みずほコーポレート銀行の調べによると、2006年に1,953億ドルだった世界の医療機器市場は、2009年まで年率6.2%で成長し、2,336億ドルまで拡大。このうち、最大市場の米国が約40%、欧州が約30%、日本が約10%を占めている。今後は先進国における医療費抑制などの政策により、成長率は鈍化するものの、2015年まで年率4.9%程度で成長するとみられている。
日本国内の医療機器市場(国内生産+輸入−輸出)は、高齢化を背景に拡大基調にある。2000年に約1.9兆円だった市場は、10年間で約20%増加し、2010年には過去最高の約2.3兆円となった。
「高齢化先進国」である日本市場は、グローバルメーカーからも注目されている。世界第2位の医療機器メーカーであるGEヘルスケア(米国)は今年10月、日本の要求水準に合わせて日本で独自開発する機種(CTなど)を倍増させ、欧米へ投入する考えを打ち出した。「日本は世界が今後直面する課題が最も早く表面化しており、世界の高齢化への対処を考える中心地になる」(ディニーンCEO)としている(日本経済新聞2012年10月24日付)。
日本の国・自治体も政策面で医療機器産業を成長産業として捉えており、日本発の革新的な医療機器の開発を後押しする動きを強化している。

板金製品が多用される医療機器の生産金額は約1兆円と推測
分析装置のトレンドである統合型の自動分析装置「Ci 4100」。東芝メディカルとアボットラボラトリーズ(米国)が共同開発した。採血管1本で生化学(東芝メディカル)と免疫(アボット)の検査ができ、患者の負担が少なく、段取り・前処理・保管を含めたトータルリードタイムを短縮する分析装置のトレンドである統合型の自動分析装置「Ci 4100」。東芝メディカルとアボットラボラトリーズ(米国)が共同開発した。採血管1本で生化学(東芝メディカル)と免疫(アボット)の検査ができ、患者の負担が少なく、段取り・前処理・保管を含めたトータルリードタイムを短縮する
医療機器は、医療行為上の効果・機能から、大きく「治療系機器」と「診断系機器」に分類される。
厚生労働省の「平成23年薬事工業生産動態統計年報」によると、「治療系機器」は、カテーテルや注射器などの「処理用機器」(国内生産金額4,374億円)と、人工関節や人工心臓などの「生体機能補助・代行機器」(2,659億円)が2大市場となっている。
「診断系機器」は、内視鏡や血圧計などの「生体現象計測・監視システム」(2,276億円)と、CT・MRIなどの「画像診断システム」(2,681億円)が2大市場となっているほか、眼科や歯科、家庭用医療機器といった市場も含まれる。...

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