本格普及期をむかえるファイバーレーザ溶接

レーザ導入後30年目の節目にファイバーレーザ溶接機を導入

次世代の接合技術で加工領域を拡大
板金市場のパイ拡大にも期待

株式会社 平出精密



次世代溶接技術の黎明期から注目
代表取締役の平出正彦氏代表取締役の平出正彦氏
平出正彦社長は、今年3月のファイバーレーザ溶接システムFLW-4000(以下、FLW)導入へと至る経緯について、次のように語った。
「遡れば1991年、ロシアの大学院を訪問したとき、国立の溶接研究所の方たちと知り合う機会がありました。この研究所には3,000人もの研究者がいて、水中溶接をはじめ、溶接技術の研究開発では世界に類をみない高い技術をもっており、その後もずっと彼らの動向を注視していました」。
「ソ連崩壊とともに、彼らは米国やオーストリアなどへと散り散りになりました。オーストリアへ渡ったグループは、今から5年ほど前に『コールドメタルトランスファー』(CMT:Cold Meta lTransfer)※を実用化しました。米国へ渡ったグループはファイバーレーザを実用化し、世界に冠たるファイバーレーザ発振器メーカー、IPGフォトニクスなどへと成長していきました」。
「大局的な視点に立って、次世代溶接技術を採り入れることを考えたとき、CMTも魅力ではありました。しかし本格的な普及段階に入るまで、あと5〜6年は必要でしょう。その点、ファイバーレーザはすでに普及段階に入り、特にFLWが採用しているIPGフォトニクスの発振器には高い信頼を寄せていました。アマダさんに期待しているのはコーディネーターとしての役割です。すべてを1社のメーカーがまかなうのではなく、板金なら板金という用途に精通したアマダさんのようなコーディネーターが、いかにして要素技術・周辺技術をインテグレート(統合)するかが重要です」。

先端エンジニアリングを 志向してきた30年
FLW による筐体の溶接跡。滑らかなビード面が形成されているFLW による筐体の溶接跡。滑らかなビード面が形成されている
(株)平出精密は戦時中の航空機向け板金加工技術をベースに、高速・高精度化を追求してきた精密板金加工メーカー。現在の取引分野は、半導体製造装置、医療機器、測定機器、印刷機器などで、爪先サイズの微細部品から、指先サイズ、手のひらサイズ、肩幅サイズ(600o程度)までの多品種少量の精密板金加工を得意としている。取り扱う材料は普通鋼板(SPCC)と処理鋼板(SECCなど)が約40%、ステンレス約30%、アルミ約30%。板厚は1.0〜1.6oがメインとなっている。
平出社長は先端技術に対してとりわけ関心が高く、長年にわたって情報収集や技術の研鑽に心を砕いてきた。
同社は30年前の1982年、業界に先駆けてレーザマシンを導入。FLWを導入した今年は、1号機のレーザ導入後30年目の節目にあたる。YAGレーザ溶接ロボットシステムも13年前の1999年に導入し、非接触レーザ3次元形状測定器も設備するなど、レーザ技術に関して膨大な実績を積み上げてきた。
加工精度±0.03oという超精密板金加工を追求するとともに、積層板金構造による機械加工品・鋳造品の置き換え、素材・機械の温度を一定にすることで実現した機械加工との精密複合加工など、エンジニアリングの分野で多岐にわたって様々な取り組みを続けてきた。...

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