地域でがんばる板金企業



京都府の「知恵の経営」実践モデル企業に認定された板金加工企業
自社ブランド製品を開発して“脱下請け”を目指す



株式会社 松田精工

「知恵の経営」実践モデル企業に認定

代表取締役社長の松田和広氏代表取締役社長の松田和広氏
「知的資産」とは特許やブランドなど の「知的財産」と同義ではなく、それら を一部に含み、さらに組織力、人材、 技術、経営理念、顧客などとのネット ワークなど、 財務諸表には表れてこな い、目には見えにくい経営資源の総称 である。
2005 年に経済産業省より「知的資産 経営」の開示ガイドラインが発表され た。京都府では、中小企業向けの知 的資産に関する「知恵の経営」報告書 作成のガイドブックを2008 年に作成 した。
鰹シ田精工は、2010 年1 月に「知恵 の経営」報告書を作成。同社の経営理 念や実績が京都府に認定され、Web 上などで紹介されるようになる。
代表取締役社長の松田和広氏は、当 時(2008 年)を振り返り「自社製品開発 プロジェクトと、リーマンショックが重 なってしまいました。前に進みたいが 先行きは不透明―身動きが取れない 中、京都府が知的資産に関する『知恵 の経営』という支援を行っていることを 知り、活用することにしました」と語る。

“丹後ちりめん”の産地から板金加工企業としてスタート
“丹後ちりめん”でも有名な京丹後市にある鰹シ田精工EM-2510NT は、同社のモノづくりに欠かせない加工マシン
同社は先代の松田浩氏が1986年に創業。2003年、代表取締役社長に松田和広氏が就任すると同時に、居シ田精工に改組。その後、工場や設備の拡充を行い、会社を軌道にのせたうえで、2008年から自社ブランド製品の製作に注力する。2010年には「知恵の経営」実践モデル企業として、京都府から認定される。
同社のモノづくりは、板金加工から各種(粉体など)塗装、組立、出荷まで行う一元生産体制。使用する材料はステンレスが80%で、対応可能な板厚は0.5〜20oと幅広い。1カ月の受注件数は1,000件を超え、製作部品点数は数千点にもなる。液晶・半導体関連の装置やフィルター関連など、多岐にわたる分野の板金加工を手掛けてきた経験を活かし、基本的に一品一様の業態となっている。そのため、新規受注の比率が高い。
「今でこそ京丹後市は、液晶・半導体関連などのハイテク分野の仕事と、板金・機械加工企業が集まる地域となっていますが、創業当時は“丹後ちりめん”が主な産業で、板金加工企業などはわずかでした。ただ、繊維産業が斜陽化する中で業種転換する企業も出始め、社会環境の変化とともに、大阪・京都市内の企業がサプライヤーを探し求めて、ハイテク分野など様々な仕事が流れてくるようになりました。当社は、フィルター関係の仕事を引き受けたことがきっかけで、モノづくり企業としてスタートしました。創業当初は中古で購入したベンディングマシンRG-25とシャーリングマシンだけでした」。...

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