地域でがんばる板金企業



移動体通信基地局向け電源盤の需要増に生産能力増強で対応
新工場の建設計画に着手― 自動化・デジタル化をさらに推進



株式会社マエショウ

旺盛な需要が見込まれる移動体通信業界

代表取締役社長の角谷和行氏代表取締役社長の角谷和行氏
「スマートフォン元年」とも称される2011年。MM総研によると、スマートフォン出荷台数は、2010年度に前年比3.7倍、2011年度に同2.7倍と急速に伸び、その後は少なくとも2016年度まで右肩上がりで推移していくと予測されている。
スマートフォンの普及によって懸念されているのがトラフィック(データ通信量)の増大だ。コンピュータネットワーク企業・シスコシステムズの試算によれば2015年の日本のトラフィックは2010年の26倍に増加するとされ、現状のインフラではまかないきれないことは確実。事実、昨年夏から今年にかけて、通信品質では定評のあるNTTドコモとKDDI(au)の2社は大規模な通信障害を発生させ、総務省の行政指導を受けている。
トラフィックの増大は、通信障害が頻発する以前から問題視されていた。昨年5月に開催された「ワイヤレスジャパン2011」で、通信事業者(以下、キャリア)各社は次のような対応策を打ち出している。
NTTドコモは、@3.9G(第3.9世代)通信規格「LTE」を採用した「Xクロッシィi」サービスの拡充、A4G(第4世代)通信規格「LTE-Advanced」の展開、B「小型マルチバンド電力増幅器」の活用――の3つを方策として掲げている。
@「Xi」サービスは2010年12月から開始しており、2010年から2015年にかけて6年間で約8,800億円の設備投資を行う。KDDIもNTTドコモに遅れること2年、今年12月にLTEサービスを開始する計画で、2015年3月期までに総額3,000億円の設備投資を行う計画。一方、ソフトバンクモバイルはWi-Fiスポットの増強によりトラフィックを分散する計画だ。
ソフトバンクは今年2月に波長が長く障害物があっても電波が届きやすい「プラチナバンド」と呼ばれる900MHz帯周波数の割り当てを獲得。NTTドコモとKDDIはすでにプラチナバンドである800MHz帯を取得しているが、通信品質で2社に後れを取っていたソフトバンクは、今回のプラチナバンドを獲得したことで、8,207億円を投じ、通信基地局を集中的に整備する計画を発表している。これにより、2012年度中にプラチナバンド対応基地局を1万6,000局設置し、2016年度中に約4万1,000局まで増設する計画だ。
さらに、KDDI傘下のUQコミュニケーションズによる3G(第3世代)の高速通信サービス「WiMAX」や、900MHz帯の割り当てをソフトバンクと競って敗れたイー・アクセスの「イーモバイル」も引き続き旺盛な設備投資を続ける計画を示している。

移動体通信基地局関連の需要増に対応し、生産能力を増強
パンチングマシンEM-2510NT+MP-1225NJ が自動倉庫MARS と連携して24 時間連続稼働に対応するパンチングマシンEM-2510NT+MP-1225NJ が自動倉庫MARS と連携して24 時間連続稼働に対応する
こうした各キャリアのインフラ投資に対応し、移動体通信基地局の分野で受注増に結びつけようとしているのが愛知県碧南市にある潟}エショウだ。
同社は、移動体通信の基地局などで使われる電源盤・引込盤・分岐盤・動力盤などの盤筐体、集合住宅・病院向けの大型の動力盤・分電盤といった盤筐体を中心に、設計・製作・配線組込み・検査まで一貫して行う盤筐体メーカー。移動体通信関連では、複数のキャリアに対して基地局向けの盤筐体を生産・供給しており、施工現場で組立を行うこともある。防水性・耐候性・耐震性に配慮した組立構造を考案し、特許などの知財権を取得するなど、独自のノウハウと一貫生産体制でキャリアの信頼を勝ち得ている。
同社を取材するのは、今回で2度目。前回(2011年3月号掲載)は角谷社長を筆頭とする3兄弟がそれぞれ営業・設計・製造技術の分野で活躍し、エンジニアリング力の醸成と徹底した自動化・デジタル化で、得意先の信頼を獲得し、着実に成長している様子を紹介した。3.11東日本大震災をはさんで再訪した今回は、電源盤の筐体設計と生産能力の増強に全社を挙げて対応している真っ只中だった。...

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