地域でがんばる板金企業



自社ブランド製品を練成し、1社依存のサプライヤー体制を打破
自社製品事業を売上比40〜50%まで引き上げる



株式会社ケーイーコーポレーション



メーカーとサプライヤーが各50%
工業団地内で1、2 位を争う規模の同社 「システム事業部」代表取締役社長の梶本丈喜氏
「私が入社した1981 年は、空調機 器や冷凍機の熱交換器や、コンプレッ サー関連の部材を供給するサプライ ヤーとしての仕事が売上の90%以上 を占め、残り10%はPP バンドを使っ た梱包機器など自社開発のOEM 製品 をメーカーに供給していました。サプ ライヤーとしては得意先1 社への依存 度が高かったため、不況への対応力 が低く、課題と捉えていました。そこ で1983 年、サプライヤーとして培っ た当社のコアコンピタンスである冷却 関連の技術を活かし、自社ブランド製 品の開発プロジェクトを立ち上げまし た。それからおよそ30 年が経過した 現在、自社製品・共同開発事業が売 上の40 〜 50%を占めるまでに成長し ました」と、梶本丈喜社長は語る。
同社は1910 年に現社長の祖父・梶 本藤三郎氏によって創業。100 年以上 の歴史を持つ。1946 年にサプライヤー 業を主軸とする本社工場(現在の名称 は「テクノ事業部」)を設立。1997 年に は自社製品の開発・組立や共同開発事 業を主力とする「システム事業部」を設 立。メーカーとサプライヤー、両方の 機能を持っている。
本社がある「テクノ事業部」は、現 在もサプライヤーとしての受託加工を 主とし、主な製品は圧力容器や冷凍機 で使う熱交換器などで、全社売上の 40 〜 50%を占める。最大の得意先で ある大手電機メーカーとは、創業当初 から取引が続いている。
1980 年前後には10 %ほどしかな かった自社製品事業は、現在「システ ム事業部」に引き継がれ、売上の40 〜 50%を占めるまでに発展した。サプラ イヤーとして熱交換器や圧力容器の製 作で培ってきた冷却技術が、自社製品 の開発に活きているという。
展開している自社製品(標準品)は、 0℃帯の冷水を供給できる「氷蓄熱式冷 却システム」や、野菜・漬物などの洗 浄や異物除去を行う「フレッシャー」、 自動車関連のマット洗浄機、医療用の 冷却機など約30 機種。標準品は毎月 20 台ほど生産している。
共同開発・カスタム品は年間80 〜 90 機種で、毎月の生産台数は60 台前 後。自社製品の中には特許取得済や出 願中の製品もあり、知的財産取得への 取り組みも意欲的に行っている。

冷却システムを豆腐用に開発
食品の急速冷却装置「コンパクトチラー」食品の急速冷却装置「コンパクトチラー」
1980 年前後のシステム事業部は、 梱包機のOEM 生産を行い、自社ブラ ンド化もしていたが、全体的には低減 傾向にあったという。
梶本社長は「私が入社した時は、す でに競合他社に押され“負け戦”の真っ 只中。入社して間もなかったのですが、 私の父親である当時の社長(現会長)に 進言し、撤退戦略を採りました。その 一方で、豆腐や漬物関連の機械などを 販売していた代理店から、冷却装置関 連の仕事をいただけたことで、自社製 品の開発へと軸足を移していきました。 1983 年に設計と営業が一体となった プロジェクトチームを立ち上げ、市場 のニーズを反映した自社製品を世に 送り出そうと奮闘していきました」と 語る。
梶本社長もメンバーのひとりだった このプロジェクトチームが、現在の「シ ステム事業部」の礎になった。 「プロジェクトチームが初めて開発し た製品が『ブラインチラー』という食品 冷却装置です。開発の背景には、1980 年代半ばの豆腐・漬物ブームがありま した。当時、豆腐を冷やすためのチラー 水の温度は、工場の空調機用と同じ5 〜 10℃。それだと、製造直後の熱い豆 腐を冷ますため、水に1 〜 2 時間さら さなければならず、雑菌が発生する要 因にもなっていました。それなら、0℃ 帯の冷水で急速に冷却して衛生面の改 善や冷却時間の短縮ができるシステム を開発すれば、商機があると思いまし た。これが『ホットパック製法』です。 加えて、高速道路などのインフラが充 実してきた時代だったので、色々な地 域に配送したいというニーズが出て きていることにも着目していました」 (梶本社長)。...

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