〜視点〜

求められる経営者のリーダーシップ 自信が驕り≠ノ繋がってはいけない



欧州発のソブリンリスクも、トリガーとなりそうなギリシャ経済に対するEUの経済支援や債権放棄などの対応策が功を奏してデフォルトを回避。経済危機が欧州から拡大する不安は免れた。しかし、イタリア、スペイン、ポルトガルなどの南欧諸国を中心に債権の格付けが下がり続けており、危機が去ったわけではなく、先送りされただけという見方が強い。しかし、当面の危機が回避されたことで、為替相場は急激に円安ユーロ高傾向に向かっており、現在は1ユーロ110円前後と、危機が懸念されていた頃と比べ20%弱の円安となっている。一方で基軸通貨であるドルも、アメリカ経済の好調さを反映して1ドル82〜84円台となり、円安ドル高傾向が続いている。年初はドルが60円台、ユーロは80円台まで円高が進むと心配されたが、円安傾向が定着したことで株価も好感、日経平均株価が1万円台を回復するなど、日本経済にも明るさが戻っている。こうした景気回復の兆しは様々な分野で好転現象を招いており、大学生の就職内定率も改善の兆しが見られている。
ソブリンリスクが先送りされただけであるように、世界経済や日本経済のファンダメンタルズを見ると、必ずしも改善されているわけではない。すでに国の借金が1,000兆円を突破した日本の財政破綻状況や年金問題など、中長期の課題の本質は何も改善されていない。それだけにマクロ経済に影響されることなく、企業の将来を確かなものとする自助努力がますます重要となっている。小誌でも過去、何度となく自助努力によって自社商品の開発や新規得意先の開拓、さらには社員教育によってマンパワーを向上し、SWOT分析で企業の強み・弱みを知る――強みを強くして弱みを克服する対策に取り組んできた企業を何社も紹介してきた。しかし、社長が決心しても一朝一夕で実現できるわけではない。たゆまぬ努力が必要である。そのような中で、こうしたハードルを乗り越えて企業体質の改善に成功している企業の事例を、今月号では紹介している。板金加工サプライヤーという呪縛を逃れ、自社商品や共同開発事業などの売上が50%前後となった企業、女性社長というアゲンストの立場から社内を再構築し見事再生させた企業、CSを徹底することでサプライヤーという役割をより明確にし、選択と集中を勝ち残ってきた企業など、何社かの事例を紹介している。
話を聞いてみれば、なるほどと思うようなことばかりだ。どこの企業にもいえることは、事業の目的と、社長以下社員1人ひとりの役割を明確にして、会社全体が同じベクトルで活動することである。当たり前のことのようだが、このことができていない企業は意外に多い。父親である社長と子息の専務・常務とで目指すものが異なっていたり、営業担当と製造担当が別の方向を向いていたり、仕事の流し方や山崩しの方法で異議があったりする。目的を共有できないことで、社員の役割が重複したり、目的遂行の役割を担う社員が不在であったりと、課題山積の企業も数多く見られる。
これまではこうした企業も、長年の取引の中でほどほどには活動ができてきた。「これまでもやってきたから、これからもやっていける」という経験則で経営が行われている企業は多い。しかし、自助努力・自己責任が厳しく問われる時代となっているだけに、こうした成り行き経営ではいずれ破綻はやってくる。
多くの経営者には“耳にたこ”だろうが、経営者の自覚とリーダーシップが先ずもって重要である。企業の大小を問わず、経営者は独善的となり、自信が“驕り”となって道を誤る場合が多い。それだけにリーダーとして自覚をもち、目的とそれに向かっていく社員の役割を明確にできる経営者が求められている。マクロ経済に明るさが見えているときだけに、企業体質を改めて見直す必要がある。