〜市場の変化に対応する配電盤業界の新潮流〜

原子力発電所の緊急冷却装置用電源関連の仕事が増加
耐震盤の厳しい要求を満たす溶接技術

シオヤユニテック株式会社



特急案件・原子炉冷却装置用電源盤
代表取締役社長の塩谷雅彦氏代表取締役社長の塩谷雅彦氏
昨年の4月、同社は3.11東日本大震災による津波でメルトダウン事故を起こした福島第一原発2号炉の冷却装置に使用される電源盤の筐体製作に携る。以後、福島第一・第二原発をはじめ、万が一、震災や津波が発生しても原発が安全に停止できるようにするため、国が定めた耐震基準に合致する電源盤の筐体製作を続けている。取材に訪れた1月末も、福島第一原発の非常電源強化用盤の筐体製作に奮闘していた。
塩谷雅彦社長は「一度目のお引合いは震災後1カ月ほどして、二度目のお引き合いは昨年末の仕事納めの数日前でした。いずれも工場の稼働状況からみて納期に間に合わせるのは厳しいと判断し、お断りすることも頭をよぎりました。しかしながら事情が事情です。世界が注目する日本国の一大事です。何より私たちの胸には、福島県民として『原発事故を早く収束して震災前の福島県に戻りたい』という強い願いがありました。社員達には『一人一人の誇りにしよう!』『高い気概を持って取り組もう!』と説得し、思い切ってお請けさせていただきました。二度目の案件は1面(幅1,000×奥行2,300×高さ2,300mm)の盤筐体フレームの溶接作業に100時間はかかるといわれたものでしたが、専任の溶接作業者が休日を返上して作業を行い、3面から構成される電源筐体フレームを要求納期どおりに2週間で納品することができました」。
「原発の再稼働にともなうストレステストでは、震度7クラスの地震にも対応できる耐震構造が求められます。面と面を重ね合わせた溶接は、それぞれの面に隙間があると、面同士で共振してしまいます。そのため“隙間ゼロ”という厳しい接合条件が求められます。溶接のビビリ痕もNG。打振テストでは筐体構造で25Hz以下、組配後の完成盤で20Hz以下に抑えなければなりません。仕上りの品質も求められ、公差マイナス0.5mm以内に収める必要があります」と語る。
同社の盤製作や溶接技術には定評がある。そのため、特急案件や高い溶接精度が求められる仕事が頻繁に舞い込んでくる。工場長兼製造部長の半澤衛氏は「お客さまは『シオヤなら対応できる』と思って仕事を持ってきてくださるわけですから、できる限りご要望にお応えします」と、多忙な時でも真摯な対応を心掛ける。

ピーク比20%増しばらくは盤関係の仕事が増える
工場長兼製造部長の半澤衛氏と、立ち上げ中のEML-3610NT+ASR-510M+TK工場長兼製造部長の半澤衛氏と、立ち上げ中のEML-3610NT+ASR-510M+TK
同社の業務比率は、金属加工機メーカーの材料棚や搬送装置などの周辺装置の仕事が50%、盤関係は40%程度となっている。
塩谷社長は「どちらも当社にとってはメインの仕事です。現在はどちらからの仕事も大幅に増えていて、仕事量はリーマンショック前のピーク比で120%にもなります。原発関連は、国内すべての原発向けに、冷却装置用をはじめとした各種電源盤の仕事を継続的にいただける予定です。今の仕事の後には、次の原発の仕事がすでに待っています」。
「日本の発電量の30% を超える原発に変わる代替エネルギーを求める動きは、今後ますます拡大していくでしょう。特に再生可能エネルギーを採り入れ電力自由化に対応するスマートグリッドが普及するようになると、受配電盤のみならず様々な盤関係の仕事は、しばらく繁忙が続くと見ています」と語る。...

つづきは本誌2012年3月号でご購読下さい。