〜市場の変化に対応する配電盤業界の新潮流〜

電力需給の環境変化が配電盤業界にも影響
電力自由化と省エネ志向が新市場創造
標準盤業界はシフトグローバル



3.11を契機に市場環境が変化
耐震試験設備(日東工業)耐震試験設備(日東工業)
配電盤業界を取り巻く市場環境は、昨年の3.11東日本大震災を機に変化の兆しが現れている。とりわけ、ライフラインを支える電源設備は、配電盤などの耐震性向上が求められるようになってきた。これは17年前の阪神淡路大震災後にも議論されてきたことだが、今回の東日本大震災でいっそうの耐震性向上が重要との認識が広がっているためだ。
自立型配電盤や幹線分岐盤は、利便性だけでなく軽量でありながら強度を備え、高剛性であることが求められる。現在普及が進んでいるプラグイン幹線分岐盤などでは、フレーム式キャビネットを採用し、中空の多段曲げフレーム構造により、軽量化を図りながら広い内装空間と強度を両立させる構造の製品が開発されるようになった。
盤構造の変化とともに、災害時のライフライン確保の観点から、停電など電力供給のトラブルを避けるため、発電所・変電所内の設備は複数を備えて冗長性を持たせる傾向が出てきた。また、送電網全体の信頼性を向上させるために、複数の発電所から送られてきた電力を電力網に並列で接続し、需要の変動に対して余裕を持って電力を供給できる体制づくりがさらに強化された。さらには、発電所や送電網の一部に不具合が発生しても供給電圧に影響が出ないよう、予備発電能力と送電線の許容容量を見極めた危機管理体制を採用するなど、電力網を2重化したり、予備装置を平常時からバックアップとして配置することで停電を回避するための対策が求められるようになっている。

電力自由化と再生可能エネルギー
太陽光発電システムにも各種の盤が使われる太陽光発電システムにも各種の盤が使われる
福島第一原発事故を受け、脱原発を要望する国民世論が高まりつつあり、原発に代表される大規模電源からの単方向の電力供給システムを、電力会社が独占的に管理するという旧来型のシステムが見直されようとしている。従来は電力会社が一貫して行ってきた電力事業を、発電・送電ネットワーク、配電ネットワーク、小売りといった機能別に分離する「電力供給のアンバンドリング」(発送電分離)が検討されるようになっている。
これが実現すれば、発電会社は送電会社に送電線網の使用料を払い、家庭や企業に電力を供給する。鉄鋼会社など発電事業への新規参入組も公平な条件で送電線網が使えるようになり、電力市場の競争が活発化、「電力自由化」に拍車がかかり、電気料金の値下げにつながると期待されている。
さらに、発送電分離は再生可能エネルギーの普及促進にもつながる。現在は、地球環境保護の観点から、低炭素社会を実現するために、省エネ対策への関心が高まっている。その結果、従来の水力、火力に加え、風力や地熱、太陽光、バイオマスによる再生可能エネルギーの開発も進んでいる。しかし、再生可能エネルギーの多くは発電容量が小さく、また、発電された電気の品質が一定ではなく、安定的な電力の供給を行うためには品質を一定にするためのパワーコンディショナーが必要となる。また、再生可能エネルギーの多くは自家発電のため、余剰電力を通常の電力網を使って電力会社へ売電することもできる。そのため、電力計測装置(パワーメーター)を取り付け、電気の売り買いの“見える化”を進める必要も出てきている。...

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