〜Sheetmetal World〜

韓国経済事情と板金トレンド-3
韓国のFTA締結と暫定発効後の状況



韓国と米国間FTA 発効にむけて
「KOMAF 2011」のAMADA ブース「KOMAF 2011」のAMADA ブース
韓国と米国の自由貿易協定(FTA)が今年の10 月に実施法案を可決し、来年の1 月に発効を念頭に批准したい意向。韓国企業は関税撤廃の恩恵を追い風に自動車を軸に米国市場で攻勢を強める構えを見せています。
韓国政府によると、対米FTA は発効から15 年間の年平均で対米輸出を12.9 億ドル(約1,000 億円)増やす見込み。輸出拡大で国内総生産(GDP)は長期的に5.7% 増え、35万人の新規雇用を創出すると考えられています。発効すると、工業製品や消費財の95% 以上の関税が、5 年以内に撤廃されることになり、その経済効果は、これまでに締結したFTA の中で最大となります。ちなみに自動車や家電などの対米輸出は、韓国総輸出の10% を占めるまでになっています。
一方、米国では、対韓輸出が年間最大110 億ドル押し上げ、雇用を7 万人以上創出する効果があると予測されています。韓国は、米国とEU という世界の2 大経済圏とFTAを結ぶ唯一の国となる意味が非常に大きいと言えます。
それに対して、日本に与える影響は、甚大と言わざるを得ません。経済産業省によると、日本は2020年までに自動車・家電・機械など対米輸出の機会が1 兆5,000 億円分、関連の国内生産の機会が3 兆7,000 億円分、奪われると試算しています。特に自動車産業への影響が大きくなります。韓国がASEAN とインドに続き、EU、米国とのFTA も発効すれば、世界自動車市場のおよそ半分に相当する3,000 万台の市場で、日本は競争不利になります。
なお、日本では製造業の国内立地の「6 重苦」が喧伝されていますが、韓国進出については「5 重楽」と言われています。即ち、「為替(ウォン安)」、「低い法人税(24%)」、「優遇税制」、「FTA」、「ローコストオペレーション(電気代が日本の40% 程度など)」です。この5 重楽に加え、地理的なメリット、経済的近似性、高度技術の集積などのシナジー効果を勘案すれば、今後グローバル志向の強い日本企業の日韓サプライヤー連携を企図した韓国進出が増加する可能性は非常に高いと思います。

韓国と豪州(オーストラリア)のFTA
AMADA KOREA のテクニカルセンターAMADA KOREA のテクニカルセンター
韓国は、EU、アメリカに続き、オーストラリアとの間でFTA を昨年の11 月に調印しました。日本にとって両国のFTA が、自動車や電気製品をはじめ各種の製造業に悪影響を与えるのは明らかです。オーストラリア統計局によると、今年1 〜 8 月に韓国から輸入した主な製品は、乗用車・電話機・テレビ・自動車部品・トラックなど。輸入額をみると、乗用車は、全世界からの輸入が前年同期比0.43% 増なのに対し、韓国からの輸入は1.96% 増、日本からの輸入は10.83% 減となっています。自動車部品は全体が18.75% 増で、韓国は2.67 倍、日本は3.44% 増となっています。また、テレビは全体が5.74% 減となる中で、韓国からは65.73% 増、日本は17.58% 減となるなど、現時点でも、対韓輸入の伸び率は対日輸入の伸び率を大きく上回っています。
特に自動車は大きな脅威です。オーストラリア統計局が発表した2010 年の対日輸入品目の1 位は乗用車で、輸入額でみた構成比は39.0%(70 億8,800 万豪ドル、1 豪ドル=約80 円)。2 位のトラック7.7%(13 億9,700 万豪ドル)を合わせると、自動車が輸入の半分近くを占めています。...

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