〜食の安全・安心を支える厨房機器〜

多様化するニーズに“総合力”で対応
震災の影響で2 工場が稼働停止も、生産体制の再構築で震災前の水準まで回復

タニコー株式会社



全国10 カ所の工場で生産
代表取締役会長の谷口一郎氏代表取締役会長の谷口一郎氏
タニコー(株)は、業務用厨房機器の総合メーカー。レストラン、ファストフード、コンビニ、集団給食――外食・中食産業のあらゆる分野で、レイアウト設計から厨房機器の設計・製造・施工・メンテナンス、機器のフルオーダーメイドまで一括対応できる“総合力”を最大の武器としている。
同社の“総合力”を支えているのが、全国に展開している営業拠点と10 カ所の工場だ。
同社は、東日本向けの製品を福島県内にある5 工場で、西日本向けの製品を福井県内にあるタニコーテック3 工場で、主に生産している。
福島と福井では、それぞれ県内の工場ごとに生産する機種が概ね決まっている。福島であれば、燃焼機器は福島鹿島工場、洗浄機器は福島原町工場、電熱機器は福島小高工場というように、大きく機種別に割り振られており、これは福井でも同様で、福島と福井のどちらでも生産に対応できる。
一部には、福島か福井、どちらかでしか生産しない製品もある。スチームコンベクションオーブンや食器洗浄機などは福島で、フライヤーなどは福井でのみ生産し、全国へ供給してきた。しかしそれも、今回の東日本大震災を契機に、生産体制の再構築を視野に入れ、取り組んでいくことになる。
北海道と九州にある2 工場は、エリア対応が主体。現地対応で即納を要求される製品や、かさばりがちな板金機器類のように、現地対応によって運送コストのメリットが大きくなる製品を主に生産している。

東日本大震災で2 工場が稼働停止
福島小高工場から福島鹿島工場へ移設したパンチングマシンEM-2510NT。生産能力アップのため、4月下旬には同型機種を2 台増設した福島小高工場から福島鹿島工場へ移設したパンチングマシンEM-2510NT。生産能力アップのため、4月下旬には同型機種を2 台増設した
東日本向けの主力の生産拠点を福島に置く同社は、3 月11 日に発生した東日本大震災、その後の福島第一原発事故によって甚大な影響を受けた。
福島県内の工場は、今回取材に訪れた「福島鹿島工場」のほか、「福島原町工場」「福島小高工場」「福島小高第二工場」「いわき工場」の計5 工場。このうち、規模が大きく、スチームコンベクションオーブンなどの戦略商品を手がける「福島小高工場」と「福島小高第二工場」の2 工場は、福島第一原発から半径20q圏内の警戒区域内に位置し、震災直後から8 カ月以上が経過した今も立入禁止の状況が続く。
東京本社で取材に応じてくれた代表取締役会長の谷口一郎氏は「2 工場の操業再開の目処は立っていません」と語る。

生産体制の再構築で震災前の水準に回復
曲げ工程。手前は「使いやすい」(中野製造部長)と高評価のベンディングマシンHDS-8025NT曲げ工程。手前は「使いやすい」(中野製造部長)と高評価のベンディングマシンHDS-8025NT
小高地区の2 工場で生産していた製品は、福島県内にあるその他の3 工場をはじめ、全国の工場へと生産移管を行った。従業員をそれぞれの工場へ異動、不足する生産設備は、小高地区の生産設備の一部を公的な許可を得て別の工場に移送した。移管先の工場では、2 交代制を敷くなどして生産能力を高めた。
「まだ設備の手当てが不十分なため、完全に元通りとはいかない部分もあります。社員みんなが努力してくれたおかげで、下期は震災前と同等の水準にまで回復します」(谷口会長)。...

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