〜視点〜

中国とのパートナーシップ構築が2012 年の課題



今年は11月というのに25度を超える夏日もある。平年であれば雪便りも聞かれる中国・北京でもコートもいらないくらいの暖かい日が続いている。途中立ち寄った湖北省・武漢では25度を超え、タクシーはクーラーをつけていた。
ところで、フランスで開催されたG20で中国の胡錦濤国家主席は、欧米から噴出する元切上げの圧力に対して強く反論した。世界経済を牽引する中国経済も6 月ごろから減速が続いている。特に不動産バブルを引き起こしている過剰流動性をなくすための金融引き締めによって、都市部での不動産価格が高止まりする一方、金利引き上げによって貸出金利が上昇、設備投資のための資金繰りに窮する中小企業も増加している。さらに元の実質的な切上げによる輸出価格の上昇、年率15〜20%と労働コストが上昇、世界の製造基地であった中国に陰りがみられるようになっている。
さらに高速鉄道を含む鉄道建設計画の凍結・先送りが相次いだ。しかも福島第一原発事故を契機に中国でも原発建設にブレーキがかかり、安全性確保から計画の見直しが進んでいる。これまでは沿岸部との経済格差を是正するため西部大開発が国家プロジェクトで行われ、今年スタートした第12次5カ年計画でも内陸部の経済発展が真っ先に掲げられ、鉄道・電力開発・電力網の整備などが計画の目玉となっていた。こうした計画に凍結・見直しが相次いだことも景気減速の大きな要因となっている。
しかし、来秋、第18回共産党大会で新しい書記長が選任され国家主席に就任する。すでに国内では全人代の代議員を選出する選挙も始まり、政治の季節に入っている。それだけに政績をアピールするため中央・地方ともに景気がこれ以上落ち込むことはないという見方が広がっており、2012年は9%程度の経済成長は確保できるという楽観論が一般的である。しかし、欧米を中心とした元切上げ圧力がこれ以上高まることは中国政府としても容認できない。成長エンジンの燃料バルブを閉められるという強い危機感がある。それがG20での胡錦濤発言になったと思われる。裏を返せば中国経済が深刻な状態にあるということを明らかにしたともいえる。
今回の中国出張で出会った業界人の中には「中国14億の人口の中で、地方に暮らす2〜3億人は明日の食糧にも困っている。また7〜8億人ともいわれる労働人口を抱え、雇用を確保しながら消費拡大を図るため賃金を上げていかなければいけない。コスト上昇圧力がある一方で、日本のように自動化・省力化を図って、高付加価値な製品を市場に出していくということも、一部の企業では実現できても、大多数の中小企業では、なかなか難しい。中国が日本と対等になるためには、まだ20年はかかる」と語る方もいた。
また、「中国人はもともと勤勉で、我慢強く向上心を持っている。こうした特長を活かして、日本のように5Sができるようになれば国際競争力は高まる。短期的には厳しいが中・長期的には中国経済は安定的に発展する」という見方を示し「中日の企業が連携していけば欧米との競争に負けることはない」として日本企業との連携を模索する業界人も増えている。
2012年は、中国とのパートナーシップを見直し、将来に向けてどのように構築していくのかじっくりと考える必要があるようだ。