〜視点〜

秋桜コスモスの花言葉、
『調和』が世界経済に示す意味を考える



10 月は秋桜コスモスの季節。取材に訪れた信濃路の秋桜街道には可憐な秋桜が咲き誇り、目を楽しませてくれる。遠く、八ヶ岳から蓼科山、車山と稜線もくっきり姿を見せ世事にささくれ立つ心をしばし和ませてくれる。秋桜の花言葉・日本では『乙女の真心』などと訳され、ギリシャ語では『調和』。この意味を改めてかみ締めながら四季の恵みに感謝をしたいと思った。ところで今ほど『調和』が求められる時代はないのではないか。7 月初旬のニッコウキスゲが美しい車山高原も、その花の根を鹿が食べてしまったので、高原を埋め尽くすあの幻想的な風景を今年は見る事ができなかった、と地元の方が話をしていた。これまで日本の四季を彩ってきたヒトと動・植物の営みにもバランスが崩れてきたように思われる。
一方、これまで世界の製造基地としてGDP 2ケタ成長を続けてきた中国経済も調整局面に入ってきた。2 ケタ成長といってもその原動力は安い人件費を武器にした製品輸出に始まり、ここ数年は『西部大開発』という政策にも現れているように、経済発展が遅れてきた内陸部の発展を促進するための社会インフラ投資であり、政府の財政支出による経済発展。その結果、アメリカではGDP の70%、日本では60%を占める個人消費がGDP に貢献する割合は、中国は35% と極めて低く、アメリカの約半分。経済成長とはいうものの、持続的な経済発展を行うためには、個人消費の底上げが絶対命題。そのため、政府は最低賃金を大幅に上げ、所得倍増を進めようとした。しかし、人件費の上昇は物価の高騰を招き、インフレをもたらす。さらに国際競争力を継続するため元高を避けるための為替介入によって、大量の元が国内に還流するようになっており、これが過剰資金として株やマンションなどの投機資金に流れ、インフレを加速する要因となった。中国政府は、かつての日本のバブル経済崩壊のような混乱が中国で起こることを避けるために、総量規制によって金融機関の貸出金利を上げた。それにより金融機関の貸出金利が上昇。中小企業では8% を超える金利を支払ってまで設備投資資金を借り入れることをためらう傾向が顕著となっており、中国経済は負のスパイラルに入ってしまった感もある。親しい中国の業界人からは高度成長よりも持続的な安定成長を目指した経済政策への転換を望む声も出始めており、来秋開催される予定の第18 回共産党大会で選出される新しい指導者がどのような経済政策を打ち出すか、に関心が集まっている。
中国のこれからの経済発展は、個人消費の拡大が支える社会構造の変化が進まなければ望めない。
一方ギリシャの経済危機はいよいよEU の屋台骨を揺るがす大問題になっている。デフォルト寸前のギリシャ経済に対してEU がどこまで援助の手を差し伸べられるのか。しかし、ギリシャの後にはスペイン、ポルトガルが控えている。EU 崩壊の危機を内包している。さらに来年、大統領選挙を控えるアメリカ経済も膨大な財政赤字をどのように改善させていくのか。高い失業率や、これまでの発展を支えてきた中間層の崩壊など課題山積である。最近は所得格差と高い失業率など、若者のアメリカ金融経済社会に対する反発も高まっている。こうした課題を見ていても解決の出口にあるのは『調和』。持てるものと持たざるもの、南北問題をどのように『調和』を図って解決させていくのかが問われている。
改めて世界経済には秋桜コスモスの可憐さが求められている。