〜Sheetmetal World〜

韓国経済事情と板金トレンド-2
EUをはじめとする韓国のFTA戦略



EUとのFTAを締結
2009年の日本と韓国の貿易額比率とFTA状況 (経済産業省「EPAの推進について」を基に編集部で作成)2009年の日本と韓国の貿易額比率とFTA状況 (経済産業省「EPAの推進について」を基に編集部で作成)
2009年、韓国を4年ぶりに訪れた際、ソウルで地下鉄に乗っている時に見た広告に、「さらに大きな市場が、そこにあります」というハングル文字と、EU加盟国の国旗のイメージが載っていました。それが韓国とEUがFTAを推進していることを知るきっかけとなりましたが、このように直接的に国民に呼びかけを行うのは、いかにも韓国らしいと感じました。
現在までに韓国との間でFTAを発効(暫定発効)している国・地域は、チリ、シンガポール、EFTA(欧州自由貿易連合)、ASEAN、インド、EUであり署名済みは米国・ペルーです。経産省の発表資料によれば、FTA(米国を含む)による貿易比率は、2009年の貿易額6,866億ドルの内、35.6%となります。一方、日本は1兆1,322億ドルのうち、16.5%を占める国々とFTAを発効済みです。
また、韓国が2012年までにFTAを締結させたいと考えている対象国は、中国、ロシア、豪州、カナダ、メキシコなどの資源国が目立ちます。
最近の韓国の輸出依存度は45%、輸入依存度は40%前後と、貿易依存度が日本の3倍以上となっており、FTAへの取り組みは緊急課題です。そのため、韓国知識経済部はEUとのFTAに関して、次のように意義を説明しています。
  1. EUは世界最大の経済圏で、韓国の輸出貿易において中国に次ぐ存在  
    • 東欧圏の潜在成長率が高い
    • EU企業による韓国への直接投資にも期待
  2. 対日貿易赤字の改善。機械や部品・素材を中心に日本製品をEU製品に転換できる
  3. 米国とのFTA批准への後押し
  4. 4国際信用度の向上
韓国‐EU間のFTAは、発効と同時に韓国側は81.7%、EU側は94%の品目で関税を撤廃し、10年以内の関税撤廃率は品目ベースで韓国側は98.1%、EU側は99.6%に達するという内容となっています。また、工業製品に関しては、EUは5年以内、韓国は7年以内に鉱工業品の関税をすべて撤廃するとしています。

韓国‐EU間のFTA締結による影響
現在、韓国は船舶・無線電話機・乗用車・FPDなどの10大主要輸出品が、対EUへの輸出額の63.3%を占めています。競合する国は、日本、中国、台湾、ASEANなど。この点では、EUとのFTAを締結したことで競争を有利に進められる利点がある反面、農業製品やサービス面では激しい競争にさらされています。
具体的な影響が見込まれる分野は、次のとおりです。...

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