〜Industrial Trend〜
円高やエネルギーショックなどの影響により、需要のある市場で生産を行う適地 適産の動きが加速している。そんな中、他業界に先駆けて現地生産を推進・強 化してきた建設機械業界の動向は、そのほかの機械業界にとっても貴重な指標 となる。8月25日に行われた(社)日本建設機械工業会の記者会見の内容を軸に、 建機業界の産業動向をレポートする。 今後も輸出比率75%前後で推移 建機工の野路國夫会長
(社)日本建設機械工業会(以下、建機工)の野路國夫会長(コマツ社長兼CEO)は、8月25日の記者会見で2011〜2012年度の需要予測を発表した(グラフ1)。調査対象は建機工が所管する日本国内の生産分のみで、海外生産分は含まれていない。発表によれば、国内生産分の2011年度の出荷金額は前年比18%増の2兆282億円と、2007年度以来の2兆円台を達成する見通し。 このうち、国内向けは24%増の5,233億円。震災の復旧・復興需要向けの投資が好調で、リース・レンタル向けなどの需要増が見込まれ、販売台数が回復すると予想している。 海外向けは16%増の1兆5,049億円。中国市場は4月以降、減速が鮮明となっているが、上期はアジアを中心とした新興国ならびに資源開発国向けの需要に加え、北米の需要が回復基調にあることから、中国の減速分をカバーすると見ている。また、下期は年明け後、中国で需要が回復し、全体では今後も需要増が続くと期待している。 2012年度の出荷金額は、「希望的観測が強い」(野路会長)と前置きしたうえで、11%増の2兆2,419億円を見込んでいる。 このうち国内向けは、6%増の5,572億円と「復旧・復興需要を考えると控えめな数字」(野路会長)。海外向けは12%増の1兆6,847億円で来年度以降も好調が持続するとしている。 野路会長は「(2010年以来)今後も輸出比率は75%前後の高水準で推移していくだろう」とし、外需主導の構図は変わらないとの考えを示した。 油圧ショベルの32%は輸出超円高の影響は避けられない キャビンをはじめとした各種カバーの取付が終了した油圧ショベル(日立建機)
建設機械の機種別出荷金額(国内生産分)の推移をグラフ2に示した。これを見ると、2011年度の出荷金額は1990年度とほぼ同水準となっているが、これは建機工が所管する国内生産分しか盛り込まれていないためで、世界の建機市場が1990年と同じ規模というわけではない。 グラフ3のとおり、日系建機メーカーが生産する油圧ショベルは約87%が海外向けで、海外生産比率は約55%(2011年度予測)と半数を超えている。世界最大の建機市場である中国をはじめ、有力市場での現地生産比率は高いが、残りの約32%は日本からの輸出となっている。 ミニショベルは、国内生産の比率がさらに高い。海外向けが全体の約80%を占める中、海外生産比率は約33%で、全体の半数近く、約47%が輸出となっている。 1ドル76円台の超円高が続く中、他業界と比べて海外生産比率が高いとされる建設機械業界でも、代表機種である油圧ショベルで約32%、ミニショベルで約47%が輸出となっているため、影響は避けられない。 野路会長は「円高がここまで短期的・急激だと経営的にはかわしようがない。利益率は同じでも、利益額は大幅に落ち込んでしまう。政府にはなんとかうまくコントロールしてほしい。1ドル85〜90円が適正な為替水準だ」と語っている。 その一方で「コマツに関して言えば、為替差損というかたちで一時的に影響を受けるが、(1ドル70円でも利益を出せる体制づくりを目指してきたので)中期的にはしっかりとコントロールしていくことで十分に対応できる」と自信をのぞかせた。... つづきは本誌2011年10月号でご購読下さい。 |