〜自動化が進む中国の板金事情〜

踊り場に来た中国経済板金業界も新規設備投資に陰り
労務費・材料費・資金調達コストの上昇、元高で中小製造業の倒産が増える



来年開催の共産党大会での人事がカギ
中国の実質GDP 成長率/三井住友アセットマネジメント作成資料より(出所:中国国家統計局)中国の実質GDP 成長率/三井住友アセットマネジメント作成資料より(出所:中国国家統計局)
中国の今後の景気について様々な見方が出ている。とりわけ第12次5カ年計画がスタートして内陸の経済発展が期待される中、社会インフラを支える建設機械の春節以降の受注の伸びが、当初の予測を下回っている。
中国工程機械工業協会によると、5月の中国の建設機械販売台数は前年同月比10%減少し、年初以来、初のマイナス成長となった。建機の前月比での落ち込みは4月に続いて2カ月連続。4月の落ち込みは、春節明けの3月の販売が好調だったことが要因と見られていたが、5月も前月比で減少したことを受け、建機各社は2011年の市場見通しの見直しを迫られている。すでに日系建機大手のコマツ、日立建機が、今年の中国市場での出荷見通しを下方修正しており、中国ローカル建機トップの三一重工、徐工なども生産台数を下方修正した。
この要因としては2月に発覚した中国・鉄道省トップの汚職によって鉄道省幹部が入れ替わり、それによって高速鉄道の建設をはじめとした鉄道建設計画が先送りされていることが挙げられている。しかも、7月23日に浙江省温洲市で発生した高速鉄道の衝突事故が、信号システムをはじめとした運行管理システムに問題があったと発表され、安全運行よりも短期間での開業を急いできた鉄道省の方針に批判が出てきており、鉄道整備計画が遅れる可能性は高い。
さらに、鉄道建設にともない42兆円(3万3,000億元)以上の負債が発生しているといわれており、鉄道運行によって得られる収益では返済がおぼつかず、かつての日本の国鉄のように、鉄道事業自体が不採算化することが目に見えている。こうしたことまで考えた鉄道建設議論が起こる可能性も高く、それだけに鉄道建設がリードしてきた建機ブームにも陰りがみられている。
一方、2012年秋には、5年に1度の最重要政治イベントである中国共産党大会が開催される。今回は共産党トップグループを形成する政治局常務委員9名のうち、習近平氏(ポスト胡錦濤の総書記候補、序列6位)、李克強氏(ポスト温家宝の首相候補、序列7位)を除く7名が内規の68歳定年を超え、広範な人事刷新が実施される見込みとなっている。それだけに政績(政治的成績)向上を目的に、地方政府や中央政府の各部署が景気拡張に走る可能性もあり、2011〜12年初頭にかけては景気が緩やかに減速するものの、2012年後半に入ると景気は一気に拡大するという見方も出ている。

貸出金利は8〜10%で資金繰りは悪化
目先の経済に目を向けると、中国人民銀行は、定期預金の基準金利と貸出基準金利を、7月に0.25ポイント引き上げた。昨年10月以降では5回目、今年に入ってからでは3回目の利上げとなる。これにより定期預金の基準金利は1年もので3.5%、貸出基準金利は1年もので6.56%となった。
このほか1年もの以外の貸出金利についても、期間の長短に応じてそれぞれ引き上げられた。これまでの中国経済を支えてきた浙江省、江蘇省、山東省、広東省、福建省などの沿岸部では、中小製造業の経営者の間で「長期の貸出金利は8〜10%に及んでおり、新たに銀行借入を行って新規の設備投資を行う環境ではなくなっている」との見方が増えている。
金融引き締めの動きを受けて、中国では中小企業の銀行からの融資困難、融資コストの上昇が原因となって資金繰りが悪化。この結果、無許可金融が横行し、無許可金融の融資額は、いまや正規の金融機関の融資総額の30%を超えると言われている。
最近面談した中国メディアの記者からは「中国では借金の返済ができなかったり、新たな借入が困難となったりして倒産する中小製造業が増加している」という話も聞かれ、今後は中小企業の倒産が連鎖することが懸念される。...

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