〜中小製造業にも導入が始まったBCP/BCM〜

CSR向上の一環―BCP策定で得意先との信頼関係を強化
「SDDサポートサービス」で加工データが救われ、早期復旧に貢献

テイ・エス・コーポレイション株式会社



得意先の指導がBCP策定のきっかけ
取締役専務の青木 等氏取締役専務の青木 等氏
「当社は2009年頃から、受注の90%以上を占めるお客さまから指導を受け、CSR(CoporateSocialResponsibility:企業の社会的責任)の一環としてBCP策定の指導を受けてきました」と青木等専務は語り始める。
3月11日に発生した東日本大震災の影響によって、日本国内でも注目が集まるようになったBCP/BCM。欧米では、もともと自己防衛や危機管理意識(リスクマネジメント)が高く、CSRの意識が高かった。企業は株主・得意先・取引先・社員などの利益を守るためにリスク対策を行うのは当たり前と考える傾向が強く、自主的にCSRの一環としてBCP策定を推進してきた。
欧米と比較すると出遅れてはいるものの、日本国内でも危機管理意識の高い一部の大手メーカーは、SCMの観点から、サプライヤーに対してCSRの意識向上と、その一環としてのBCP策定を指導するケースが見られていた。2009年頃からこうした取り組みを進めている同社の得意先メーカーも、こうした危機管理意識の高い大手メーカーの1つに数えられる。

BCP策定で得意先との一体感が強まる
自動倉庫MARS が3台のパンチングマシンと連動している。MARS(奥)の棚は材料ズレ防止のために、安全ピンの設置やネットによる落下防止を検討中自動倉庫MARS が3台のパンチングマシンと連動している。MARS(奥)の棚は材料ズレ防止のために、安全ピンの設置やネットによる落下防止を検討中
同社の得意先社数は7〜8社。そのうちCSRの指導を受けているメインの得意先から受注している通信機器・情報機器関連の精密板金部品の仕事が、売上全体の約90%を占める。
青木専務は「BCPの策定を通じて、得意先との一体感・信頼関係はいっそう強固になったと思います」と話す。
同社のBCPは、営業課・品質保証課・機構課・製作課の4部門でそれぞれまとめられている(表)。
「リスク因子が地震(震度5以上)であれば、従業員の安否確認は全部門共通です。営業データのバックアップは、社内の別サーバーにリアルタイムで同期(ミラーリング)し、外部メディアに書き出して、1週間分を保管しています。しかし、これはもともとシステムトラブルによるデータ消失を前提とした対策ですから、外部メディアはサーバー脇の棚に置いているだけ。BCPの観点からすると、防火金庫に保管する、別の建屋に保管する、外部メディアでなくデータセンターに転送・保管するといった対策を採ることも必要だと感じ、検討しています」。
「また、栃木県は落雷が多く、実際に落雷による停電を経験したこともあるため、UPS(無停電電源装置)も設備しています。インフルエンザが疑われる時には、出社をせずに、とにかく休むこと。しかし、集団感染で人員が不足することも念頭に置いて、『課内負荷管理』(課内で人員調整をし、調整できないときは他部署への応援を要請する)も盛り込んでいます。さらに、キュービクルに電力のデマンドコントローラを設置。Web経由で24時間、漏電を監視するだけでなく、ピーク電力を調整し、消費電力量の削減(節電)にも役立てようとしています」(青木専務)。...

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