〜中小製造業にも導入が始まったBCP/BCM〜

2009年に「BCP特別保証」取得
お客さまとともに社員をも災害から守る
──早い取り組みでサプライチェーンつなぐ

森精工 株式会社



BCP/BCMへの取り組みと県の対応
森 俊幸社長(左)と山田和幸部長(右)森 俊幸社長(左)と山田和幸部長(右)
3月11日の東日本大震災で一気に注目を浴びるようになったBCP/BCM。ちょうど1年前に同社を取材した折に「当社は2009年に自社のBCPを策定、静岡県信用保証協会から『BCP特別保証制度』の対象企業に認定されました。奇しくも被災した場合には無担保で8,000万円の保証が受けられることになっています」(森俊幸社長)と伺っていた。同社は県内の中小企業としては3番目とすばやい対応で「静岡県BCP特別保証」を取得している。
静岡県内の企業は他の都道府県より早い時期から、絶えず危機を意識した経営を行ってきた。その要因として、同県は東海沖地震と東南海地震が連動して起こるハイリスクな場所に位置していること。また、2009年・2010年と新型インフルエンザが大流行し、県内でも多くの感染者が出たこと。さらに風水害や火災、情報系のトラブルなど、企業を取り巻く環境には数多くのリスクが付きまとっている状況であること、といったことが挙げられる。
特に浜松地区には中小製造業が集積しており、これら企業は日本のあらゆる製造業・輸送業にとって重要な地位を占めている。このたびの震災後は、1つの部品の納入が止まれば、その川下の部品、さらには最終製品のラインが止まってしまった例も報告され、特にサプライチェーンの重要性が見直されている。その“1つの部品”を、無事に納品する責任を果たせるかどうかが、企業としての生命線になる。
静岡県は「BCPは自らの企業を守るうえでも、日本の産業活動を守る上でも重要なことです。当県の企業がBCPを導入して、“緊急事態に強い静岡県”を全国にアピールすることができる」──としてBCPへの取り組み・策定を推奨している。

同社の取り組みと環境
同社を中心に、取引先の所在地がマーキングされ、道路なども確認できるようになっている同社を中心に、取引先の所在地がマーキングされ、道路なども確認できるようになっている
同社のある湖西工業団地地区は、他の地域と比較しても強い地盤の上に位置すると言われ、東海沖地震が来ても、比較的影響が少ないのではないか、と言われている。森俊幸社長に聞く。
「まだ、そんなにサプライチェーンの重要性が声高に叫ばれていない時でしたが、東海沖地震のことは絶えず頭にありました。当社がBCPに取り組み始めたときは、社員を守る色合いが濃かったです。防災プロジェクトが2000年頃から活動を始め、2004年には書類関係がまとめられ、それらに必要な防災グッズが備蓄されました。2007年に気象庁が提供する緊急地震速報の受信機『デジタルなまず』を導入し、同年の終わり頃に商工会の講演会が行われ、静岡県地震防災センターを見学しました。いよいよ真剣に取り組んだ方が良いと判断し、2008年にBCP講習会(全5回)に参加し、社内へ派遣講師を招聘し、12回の講習会を実施して『静岡県BCP特別保証』を取得し、無担保保証8,000万円の枠も取り付けました」。 
早い時期からの同社の取り組みは地元新聞にも取り上げられ、防災意識の高い企業として、発注元や同業者などの評価につながった。...

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