〜世界経済をリードする中国の板金事情〜

創業8年で従業員1,500名の中堅企業に成長
「アメーバ経営」で社内からリーダーを選任、製造の分社化を進める

広州千恵チェンホエ金属制品有限公司



小売業からの転身
黄建波CEO。同社で製造する各種アミューズメントマシンが展示されているショールームにて黄建波CEO。同社で製造する各種アミューズメントマシンが展示されているショールームにて
2003年に設立された同社の創業者、黄建波CEOは、もともと小規模なスー パーマーケットを経営していたが、製造業への転身を考えた。
近隣の製造業を研究し、大半の製造業はプレス中心で、金型発注から生産の立上げまでに時間がかかっていることを知った。注文から出荷までのリードタイムを短縮できれば、ビジネスチャンスはあると考え、設備を見に北京で開催されていた機械見本市に行った。
その時、立ち寄ったのがアマダブース。パンチングマシンARIES-255が展示され、シート材の穴あけ・ニブリング加工を実演していた。黄CEOは「このマシンを導入すればプレス加工に比べてスピードが速くなる。金型製作の時間も不要になる」と考え、導入を決断。ARIES-255が同社の最初の設備となった。

アミューズメントマシン向けの加工がヒット
曲げ工程。ベンディングマシンRGMII-1003が並ぶ曲げ工程。ベンディングマシンRGMII-1003が並ぶ
創業当時の従業員は45名。仕事は黄CEOの予想どおり、従来プレス加工されていた仕事を板金加工で受注できた。
その頃から同社の主力事業となったのが、バスケットボール、シューティング、ドライビング、フィッシングなど、遊園地やゲームセンターに設置されていたゲーム機や、遊具、コイン交換機や貨幣処理機など、アミューズメント関連の板金製品だった。
当時から広州市番禺地区には、中国を代表するアミューズメント関連企業が集積。広州市の地方政府も同地区をアミューズメントの基地と位置づけ、関連産業の振興に力を入れていた。こうした背景もあって、同社が板金工場を立ち上げると、周辺のアミューズメント関連企業から、架台やカバー、ブラケットなどアミュ−ズメントマシンを構成する板金部材の仕事を請けられるようになった。半年後には2台目のARIES-255やベンディングマシンRG1030などを導入した。
同社は現在、創業8年にして従業員数1,500名の中堅企業になり、30歳で起業した黄CEOは起業家として一躍、現地でも注目される存在になった。

中国の“ゲーセン”事情
黄CEOは、同社で製造する各種アミューズメントマシンのショールームでインタビューに応じてくれた。
「アミューズメントマシンに使われる板金に着目したのが功を奏しました。2010年4月にゲームセンターに関連する法律が施行され、“ゲーセンブーム” が巻き起こっています」。
アミューズメントマシンを設置するゲームセンターは現在、中国の若者に大変な人気となっている。すべてコインで遊ぶシステムを導入しており、1990年代まで、ゲームセンターのゲームは日本の中古ゲーム機が多かったが、最近は中国製の最新機種も目立っている。
「昨年4月の法律制定以来、ゲームセンターは中国全土で急速に普及しはじめており、3万カ所のゲームセンターがあるとの情報もあります。その数はまだまだ増えています。これまでは日本産が人気でしたが、今では中国産のゲームがシェアの50%を超えています。ヒット中のゲームの“腕自慢”をSNSサイトで募って“技”を競う大会なども各種開催されています」。...

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