〜移動体通信機器もコストがキーに〜

世界標準規格の採用で“ガラパゴス”からの脱却を図る
市場のグローバル化、仕様の標準化で国内市場でもコスト競争が激化



各国でLTEサービスが開始
2010年12月、移動体通信事業者(以下、キャリア)大手のNTT ドコモが、次世代の移動体通信規格「LTE」の商用サービス「Xi」(クロッシィ)を開始した。
NTTドコモは、既存の3Gのサービスエリアの中で高速通信の需要が大きいエリアから順に導入を進める方針。2014年までにLTE対応の基地局を2万局設け、人口カバー率50%を目指す。また、イー・モバイル、 KDDI、ソフトバンクモバイルも2012年までのサービス開始を目指している。
LTEは、携帯電話やスマートフォン、データ通信といった移動体通信の事実上の世界標準規格。日本のNTTドコモだけでなく、米・ベライゾン、北欧・テリアソネラ、独・ボーダフォンがすでに商用サービスを開始している。さらに、米・AT&Tや韓国KT、中国移動(チャイナモバイル)なども今年中にサービスを開始する計画で、その後は、アジアなど各国で普及が進むと見られる。

世界標準規格の採用で“ガラパゴス”から脱却
図1 主な移動体通信規格の2Gから4Gに至るロードマップ/独立行政法人情報通信研究機構の資料をもとに編集部で作成図1 主な移動体通信規格の2Gから4Gに至るロードマップ/独立行政法人情報通信研究機構の資料をもとに編集部で作成
世界標準規格であるLTEの普及をきっかけに、日本の移動体通信産業では期待感が広がっている。移動体通信の規格は、世界的には2G(第2世代移動通信システム、「G」は世代の意)がまだまだ主流で、3Gや3.5Gの普及は先進国の都市部 や新興国の主要都市に限られる(図1)。2Gでは「GSM」という通信規格が、ヨーロッパやアジアを中心に世界100カ国で利用されており、現在も事実上の世界標準となっている。しかし日本では「PDC」という特殊規格が採用されており、海外端末メーカーの参入や国際ローミングサービスが普及せず、“鎖国”の状態だった。日本の携帯電話が“ガラパゴス”と呼ばれるようになった要因である。
3Gは、世界的には「W-CDMA」(日本ではNTTドコモとソフトバンクモバイルが採用)が主流で、「CDMA2000」(日本ではKDDIが採用)が追従している。さらに、3Gを拡張し、高速データ通信に対応した3.5Gもある。中国では、契約者数5億人をほこる世界最大手の中国移動が3Gの特殊規格「TD-CDMA」を採用している。
これが3.9Gでは、CDMA2000系の3.9G通信規格「UMB」が開発中止となり、世界130ちかくのキャリアがLTEを採用すると表明している。3.9Gの規格としては他に「WiMAX」もあるが、LTEが事実上の世界標準規格となったことで、海外メーカーによる日本市場への参入が促進されるのと引き替えに、日本の通信機器メーカーにとっては、頭打ちの日本市場からボリュームゾーンである海外市場へと打って出る環境が整ったことになる。...

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