〜世界で加速する鉄道インフラの整備〜

2012年までは受注堅調、新幹線・鉄道車両の
板金部材加工が70〜80%を占める
震災を乗り越え、新天地で手堅く事業を拡大

株式会社阪神工作所



同社に伺うのは実に15年ぶり。震災前に取材して旧知で、1995年1月の阪神・淡路大震災で兵庫区の本社工場が全壊したと聞き、飛んでいった。そして、悪夢のごとき出来事から、仮設工場への移転・操業にこぎつけるまでをドキュメンタリーとして本誌に掲載。被害から立ち直る若き経営者の奮闘ぶりを紹介し、読者から多くの共感を得た。

再生の原動力は仲間との輪
池内伸行社長池内伸行社長
同社は「協同組合 産団協」に参加、これは、1990年に神戸市より神戸複合産業団地構想があり、進出の打診を受けた企業が準備会を経て、震災後の1995年9月に設立したもの。産業公害防止、企業の発展などを目的に、企業団体ゼロエミッションへの取り組みや、少子高齢化社会に対応するため、医療・健康・福祉関連機器などの開発などを通じて地域に貢献することを目的としている。震災後は復興第1号の工業団地を整備した。ここは広い敷地と神戸や明石などから車で40分くらいの場所に位置し、神戸西インターチェンジの幹線道路に至近のロケーションの良い所。ここには被災企業の他に、現在先端技術を誇る20社が操業している。
「自然が豊かで快適です。社員も以前と同様の通勤圏内で、新しい工場でも活躍をしてくれています」。
「鉄道車両メーカーからは、鉄道車両の艤装用の板金部材の仕事を受け、新幹線車両の間仕切りの骨組み部材の加工・組立を手がけています。発注元は北米の2拠点に進出し、そこでの生産も盛んになっています。アメリカの鉄道は、連邦政府や州政府の助成金を受けて敷設されるため、そこで使用する車両はもとより、あらゆる部材の調達に関しては『バイ・アメリカン法』により、部材の60%をアメリカ国内で調達されています。ただ、一部は日本で調達してアメリカへ送るモノもあります。そういった部材の一部を当社でも担当しています」。
「現在の受注環境は2012年までは高原状態が続くと言われています。JR東海、JR西日本のN700系が2011年いっぱい、JR西日本、JR九州の九州新幹線向けN700系7000番代、8000番代、JR東日本のE5系、E6系が、2012年までは継続します。しかし、それから先はまだ見えていない。また、コストが大変厳しくなってきています。鉄道車両関連は編成ごとの受注で6両、8両、10両、12両、16両単位で発注され、部品は、編成ごとに何両目の何の部品というように管理されます。ロット単位は月に1個から十数個で、典型的な多品種・変種変量生産品です」。

日本の新幹線のケース
溶接・組立まで進んだ部品溶接・組立まで進んだ部品
「得意先は新幹線車両から通勤車両まで生産しています。新幹線車両の構体にダブルスキン構造のアルミの引き抜き材が使われるようになって、車両は大幅に軽量化されました。24mに及ぶアルミの形材を均一の厚さで成形・引き抜きを行い、それを溶接で組み立てて、構体フレームを製造します。当社では新幹線の室内間仕切りの骨組みを加工しています。アルミの形材を切断して穴あけ、切り欠きを入れるなどして骨を作成、それらを組み立てて骨組みをつくります。また、通勤車両などでは、ステンレスに銅板ロウ付けの部品もあります。SUS304Lでロットは50〜60個くらい。アメリカ向けはSUS304Lで、日本より若干厚めで4〜6mmが中心です。当社ではレーザで切断して溶接まで行っています。部品内容が高度化したためか、複数の車両メーカーからの引き合いも徐々に産まれているようで、受注形態が、従来の縦割から横割になってきたと感じます。車体の骨組み、室間の仕切り、自動ドアの骨組みなど新幹線関連だけで売上全体の70〜80%を占めるようになりました」。
人気のJR西日本の新幹線レールスター8両編成の仕事を受けても、ロットは1個単位、16両編成でも受注ロットは同じとのこと。N700系でも、16編成の場合、1車両ごとに構造が異なり、仕切りやドア、肘掛けイスの寸法がわずかずつ変わってくる。前後の先端車両だけが異寸法で、間の14両は同じサイズの客室かと思っていた筆者にとっては目からウロコだった。同社制作の内妻切骨組は対4メーカ中、2メーカ、かつ全車両の約7割に達する。
「国内ではE5系、E6系、さらにリニアと、今は新幹線特需で忙しい上に、民鉄のステンレス車両の骨組みなどの仕事も同様。2012年まではこの状態が続く、と言われていますが、2012年以後は15%くらい減ると予想されているので懸念される部分でもあります」。...

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