〜世界で加速する鉄道インフラの整備〜

拡大する床下機器の海外市場にモノづくりの標準化で挑む
地産地消を可能にする生産工程の自動化・システム化

株式会社日立製作所 社会・産業インフラシステム社



日本が世界に誇る鉄道車両用床下機器
水戸交通システム本部 電気品 製造部 部長・本宮敏行氏水戸交通システム本部 電気品 製造部 部長・本宮敏行氏
茨城県ひたちなか市にある日立製作所水戸事業所。同事業所内にある社会・産業インフラシステム社交通システム事業部・水戸交通システム本部は、鉄道車両の床下機器などを開発・製造する車両用制御装置、自動列車制御装置やネットワーク信号制御システムを担当する列車用保安装置、そして運行管理システムなどの交通システムという3つの部門から成り立っている。そのうち、水戸交通システム本部・電気品製造部では、電車の電力を制御するVVVFインバータ制御装置や補助電源装置、ハイブリッド駆動システムなど、いわゆる床下機器を製造している。
昨今、鉄道車両を取り巻く環境は、大きく様変わりしている。国内では当面大きな路線拡大の予定はなく、置き換え需要が中心となり、2012年以降は市場の縮小が予想される。一方、海外は、世界中で鉄道需要が拡大しており、高い技術力を持つ日本メーカーにとって「海外市場への対応が必須」と、同社水戸交通システム本部電気品製造部部長の本宮敏行氏は語っている。
現在、床下機器の国内市場は年間約1,000億円強といわれ、同社は約30%のシェアを獲得している。その内訳は、やはり輸出が右肩上がりで増え続けており、約30%を海外向け製品が占めている。

ますます増大する中国向け製品への対応
電気品製造部 生産技術グループ 主任技師・菅原 渉氏電気品製造部 生産技術グループ 主任技師・菅原 渉氏
現在の受注傾向について、本宮部長は「国内は小ロットで多品種。海外、特に中国向けはロット数が多くて種類は少ない。国内が月あたり数台を数年かけて生産するイメージなら、海外は月あたり数十台を数カ月と、受注量も生産のサイクルもまったく違います」と話す。
中でも、中国のインフラ・鉄道整備に伴う案件は、ますます増加している。現在、中国では「中長期鉄道網計画」に基づく高速鉄道の路線拡大だけでなく、都市圏における軌道交通の整備も進められている。同社でも高速鉄道用に加え、北京・上海・西安などの地下鉄、重慶のモノレールなどの床下機器を受注している。
国内向けが小ロットでほとんどをオーダーで設計するの対して、中国向けは「製品の真新しさよりも、安定した実績のある製品」(本宮部長)が要求されるという。

製造リードタイムを1/4まで短縮するためのシステム化
現在、同社では床下機器にかかわる板金加工・溶接加工・塗装工程の約70%を内製化している現在、同社では床下機器にかかわる板金加工・溶接加工・塗装工程の約70%を内製化している
現在、同社は床下機器にかかわる板金加工・溶接加工・塗装工程の約70%を内製化している。外注サプライヤーは、板金・プレスで10社程度を認定工場に指定。何よりも品質を評価基準に、品質・安全面・納期などについて定期的な指導も行う。
そんな同社が現在、取り組んでいるのが「数年前の1/4まで製造リードタイムを短縮する」(本宮部長)こと。そのため、設計と現場が一緒になって生産工程の見直しを進めている。
床下機器は、1台につき部品点数は約1,000点、板金部材だけでも数百点に上る。その材料は、鉄(SPCC)60%、アルミ40%弱、ステンレスが数%で、部材は材質・板厚などの違いにより100種類近くになる。
これら多様な材料に加えて、随所に溶接が必要な生産工程は、複雑多岐にわたる。一方で、ますます増大が見込める海外向けの大量受注に対応するために、工程のシステム化・自動化が課題となっている。...

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