〜世界で加速する鉄道インフラの整備〜
2012年度以降、縮小する国内市場 (社)日本鉄道車輌工業会がまとめた国内向け鉄道車両の需要見通し※によると、2012年度の電車の生産見通しはJR・公民鉄を合わせて1,455両。2009年度の生産実績は1,644両で、3年間で11.5%の減少となる見込みだ。 落ち込みの要因は、JR東海・JR西日本向けN700系の集中的な投入計画が2011年度で完了すること。また、2011年3月に全線開業を予定している九州新幹線向け山陽・九州新幹線相互直通量産車両(N700系7000番代、8000番代)の本格生産が一段落することである。 新幹線車両のみに注目すると、2009-2011年度の3年間の年間平均需要は452両。これが2012-2014年度の3年間は年間平均252両となり、44.4%減と大幅に落ち込むことになる(グラフ1)。 2011年度からはJR東日本のE5系・E6系の時速320q対応車両の量産が本格化し、2013年度末に予定している東北新幹線全列車320q対応に合わせて量産は継続すると見られる。2014年の北陸新幹線の金沢延伸による需要も見込まれる。しかし、ボリュームの縮小は避けられない。 通勤車両を見ると、JR東日本のE233系などへの置き換えが進むが、ほぼ横ばい。また、アルミ・ステンレス製車両の割合が高まっていること、関西大手私鉄や中小私鉄で乗客数の低減が続いていることなどから、使用限度年数が延び、長期的には更新需要も減少すると見られている。 生産台数だけでなく、発注コストも下落している。景気低迷に加え、高速道路料金の引き下げや新型インフルエンザの影響などを受けて、発注元である鉄道事業者の採算が悪化。JR東日本の2009年度の営業利益(連結)は前年度比20.3%減と過去最大の減益幅を記録し、JR西日本も同37.5%減となっている。2010年度以降は回復局面に入るが、数%程度の伸びにとどまる見込みだ。 そのため、新型車両は導入予算が著しく削られる傾向にあり、鉄道車両メーカーならびに関連サプライヤーに対するコストダウン要請が厳しさを増している。 年率2〜2.5%で成長する海外市場 一方、世界へ目を向けると、新興国の交通インフラ整備などにより、鉄道車両の需要は急速に伸びている(グラフ2)。先進国では、環境負荷の低減や都市部の交通渋滞解消の手段として輸送方法を鉄道に転換するモーダルシフトが進んでいる。 ヨーロッパ鉄道産業連盟(UNIFE)によると、世界の鉄道産業全体(車両以外を含む)の市場規模は、2005-2007年の年間平均1,220億ユーロ(約12.8兆円、1ユーロ=105円換算)から2007-2009年の1,360億ユーロ(約14.3兆円)と、成長率11%で拡大。今後2016年までは、年率2〜2.5%程度で成長を持続すると推測している。 また、表に示した高速鉄道だけでなく、都市間を結ぶ幹線鉄道、地下鉄など都市鉄道の整備計画も各地で進んでいる。... つづきは本誌2011年2月号でご購読下さい。 |